中国トレンドExpress

中国で女王、女神が溢れる大商戦!注目の「婦女節」キャンペーンを追う② ~「婦女節」商戦街角チェック~

日本では比較的「ノーマーク」になってしまっている中国の「婦女節(国際婦人デー)」。すでに中国ではその名を「女王節」などと変えながらEC、リアル店舗を巻き込んだ一大商戦へと成長しています。

今回の中国「婦女節」商戦特集は、3月8日にネット上や上海市内で見かけた関連商戦のキャンペーンの様子をお届けします。


自立型女性は「自己投資」消費へ!

日本で名の知れた中国の商戦と言えば「ダブルイレブン」。

確かにダブルイレブンは中国どころか世界的に見ても最大級の小売りイベント。その割引率も中国でもっとも大きく(つまり安くなる)、中国消費者どころか日本メーカーにとっても最大のターゲット。「普段使いの商品を買い溜め!」(上海在住80後女性)る最大のチャンスとなっています。

それに次ぐものと言えば、まもなく訪れる618商戦で、こちらも最近は日本の企業が注目している商戦となっていますが、実は「3・8婦女節」はそれらに並ぶ商戦として盛り上がり、メーカーも気合を入れたキャンペーンを繰り広げる大型商戦になっています。

その理由はターゲットが消費力旺盛な中国女性であること。そしてこの消費層はこの日に「自分投資の消費を多くする」からなのです。

 

もともと中国女性の社会進出に積極的な中国ですが、近年は経済的に自立している女性が増加中。

こうした女性の多くは「新しい商品」、「新しい流行」へのチャレンジや、「イメージチェンジ」などへの興味も高い傾向があります。

普段は仕事や家事などで「そんな時間も」というケースが多いのですが、3月8日だけは別。女性のためのこの日に、「頑張ってきた自分へのご褒美」として普段と異なるブランド、あるいは新商品に手を伸ばすよい機会になっているのです。

 

そうしたターゲットを想定して、商戦に参加するメーカーも単に化粧品会社だけではなく、女性が「自分を愛する、そして愛される」ため、女性の全ての要望と悩みを解決するために、

  • スキンケア:基礎化粧品、美容機器、メイクアップ、美容ドリンクなど
  • スタイル:インナー、健康食品、ダイエットサプリメントなど
  • ファッション:服、靴、バッグ、アクセサリー、イヤフォンなど
  • その他嗜好品:香水、お酒、腕時計など

など、まさに全方位から商品を提供してるのです。

ここでも展開される「T-Mall vs JD.com」のバトル形式

こうして展開される「婦女節」商戦。盛り上がりを見せるのはやはりEC業界。そしてEC業界と言えば、もちろんT-MallとJD.comの2台巨頭によるバトルです。

2019年の両者のキャンペーンを見てみましょう。

-圧倒的な力見せるT-MallがECの「婦女節」商戦をけん引

2019年の天猫「女王節」キャンペーンは3月3日から3月9日までの7日間。その中で以下のように目的が分かれます。

予熱期: 03月03日00:00:00~03月06日23:59:59
本番期: 03月07日00:00:00~03月09日23:59:59

予熱期で商品のPRやキャンペーンのプロモーション活動を展開し、3月7日からの3日間で刈り取る。ダブルイレブンを短期スパンで応用したキャンペーン設計になっています。

 

通期キャンペーン

スーパー「ご祝儀袋」

獲得期間:3月3日〜3月9日
使用期間:3月7日〜3月9日

一日3回抽選に参加可能。獲得最大金額は998元のクーポン。

※3日、7日、9日の当選率は最も高い

 

予熱期(3月3日〜6日)キャンペーン

買い物カートに300元分入れるごとに30元の割引を得られる、無上限。

日によって半額の割引クーポン、女王新品限定クーポン、百元神クーポンなど多様なクーポンを獲得

 

本番期間中(3月7日〜9日)キャンペーン

1時間限定バーゲンセール

3月7日〜9日、毎日1時間限定で開催される

:7日(0:00~1:00)、8日(10:00~11:00)、9日(10:00~11:00)

※7日は平日の木曜日、8にちは平日の金曜日

 


【動画】上海の徐家匯地下鉄駅に設置された巨大な「女王節」PRトンネルパネル

―対するJD.comは長期戦&男性もターゲットに

T-Mallの「女王節」が誕生してから、EC業界には「女神節」や「仙女節」など、女性を「持ちあげる」ネーミングが乱立。

男性会員が比較的多いJD.comもこの機会を無視できず、「胡蝶節」と名付け女性向けの商品、主に化粧品のキャンペーンを展開しています。

 

特徴の一つはキャンペーン期間が「2月25日00:00:00~ 3月13日23:59:59」と長いこと。

  • 2月25日〜28日 :新商品発表(限定品も含む)
  • 3月1日 :新商品購入日 300元の商品毎に30元の割引
  • 3月2日〜6日: 新商品以外の女性関連商品の予熱期間(購入したい商品を事前に買い物カートに入れる)
  • 3月7日〜9日 :購入期間。300元の商品毎に30元の割引

JD.comのもう一つの特徴は、なんと「メンズ商品」の期間も設けていることです。

もともと男性ユーザーの多いJD.comはこの婦女節商戦期間も、女性に限定するネーミングではなく「胡蝶節」と、やや抽象的なイメージで臨みました。

その心は「性別は関係なくみんな美しい!」ということ。そのために、下記の期間を男性向けキャンペーンを展開しました。

  • 3月10日〜12日:男性関連商品の予熱期間
  • 3月13日:300元の商品毎に30元の割引を得られる

(それ以外、60元、50元、100元など、商品のカテゴリーによって豊富なクーポン券あり)

盛り上がりはECだけじゃない、リアル店舗の底力

「婦女節」商戦が他の商戦と異なるポイント、それはリアル店舗も引けを取っていないこと。

これは元々、婦女節商戦においてはEC商戦(W11、618など)よりも先んじて商戦を展開していたという経緯があるからなのです。

今年に至っても変わっておらず、3月8日当日、百貨店やショッピングモールは女性向け商品の大規模キャンペーンを展開しています。

ちなみに一昔前、婦女節当日に「一年分のインナーを買う」というのが多くの中国女性の定番でした。

時代が変わった今ではインナーだけでなく、輸入化粧品も人気で、普段は少し手が届きにくい商品を「自分へのご褒美で」購入するという女性が少なくありません。

上海の有名観光地「南京路歩行者天国」の入り口にある老舗百貨店「新世界城」は3月8日当日閉店時間を2時間延長し、深夜24時まで営業していました。

上海の歴史ある百貨店「新世界城」は婦女節に合わせて営業時間延長の告知を

上海で有名な下着ブランド「古今」も精力的にPR

日系化粧品ブランドのテナントでは平日にもかかわらず、3~4割引目当ての客が溢れている

店に足を踏み入れると、金曜日だというのに人が溢れていました。

よく見れば女性だけではなく、男性客の姿も見られます。おそらくは自分の恋人や夫人のために頑張ってプレゼント購入にやってきているのかもしれません(笑)そのためなのか、化粧品売り場も女性スタッフのほか、イケメンの男性も配置。男性客にも相談しやすい状況を作ったようです。

 

また、婦女節イベントでリアル店舗が人気になるのは、割引ルールがECのように複雑ではなく、「半額」などわかりやすい設定になっていることもあるようです。

店頭キャンペーンから見える現代中国人女性の悩み

こうしたリアル店舗のキャンペーン、見ていると単なる安さだけではなく、近年の女性の悩み、ツボに訴えかけるアプローチが増えていることが見受けられます。とくに「外見だけではなく、内面からもっと美しく」といった訴求が多くなっている傾向があります。

編集部が気になったキャンペーンをピックアップします。

女性の悩みに訴求「眠りが女神の力を開放する」

日中を問わず、働いている女性の悩みの一つに「睡眠」があります。

中国のライフスタイルグッズブランド「EDITOR」は婦女節商戦で、この悩みを解決するための快眠グッズを集めて女性の快眠をPR。

紹介商品はアロマのお香、マフラー、アイマスク、パジャマ、マッサージオイル、Bluetoothのスピーカーなど。

熟睡に関連する商品をまとめて紹介している

内側から溢れる美しさを養成「気高い女神養成コース」

中国人女性(男性も同じ)の習い事といえば、仕事、転職や昇進のためのものがほとんどでした。しかし近年はそうした事業で成果を収めた中国女性の間に、「文化的な」習い事に興味を持ち始めている様子。

上海市内のショッピングモール「世茂広場」が婦女節シーズンに推し進めた「気高い女神養成コース」を見てみると:

  • 木製アクセサリー
  • フランス風フラワーボックス
  • 日本式生け花
  • ウクレレ
  • 写真撮影とシェア

など、内面のセンスを鍛えるレッスン。

そして同時に「子供と一緒にLEGO作り」といった、親子関係をもっと親密にするレッスンがありました。

これは仕事を一旦置いて、自分の気持ちを落ち着けたり母として子供との関係をもっと大事にしよう、という現代の中国人女性心のあらわれかもしれません。

上海で新しい総合モール「世茂国際広場」にある電子広告板

奇抜なキャンペーン「女神商店」

一人のイケメン(男性2名は交番制らしい)が「女神商店」と呼ばれる透明なボックスの中に入っており、女性は138元以上の買い物で、ボックス内の男性と5回ジャンケンができる、というもの。

じゃんけんの結果、4回勝てば「商店(ボックス)」中のぬいぐるみを一つ持ち帰れる、 5勝するとイケメンと「WeChat交換」または「3秒間のハグ」のどちらかを選べるというものです。

はてさて、ぬいぐるみやイケメンによる女性ホルモンの大量生成でより綺麗になる、という狙いなのでしょうか(笑)

モール1階のど真ん中に設置された「女神商店」

「女王節」と呼ばれようになり、中国の「国際婦人デー」は年齢関係なく、より堂々とお祝いするようになりました。そしてその性質は、かつての「自由と平等を謳う」という目的ではなく、「自分を愛するためのショッピング+周りに愛してもらう(プレゼントをもらう)日」へと姿を変えたようです。

 

次回は職業別に6人の上海女性にインタビュー。

中国は本当に「男女平等」?婦人節に何をする?何を買う?今一番の悩みは?などなど、中国女性の心の中を覗いていきます。