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中国で女王、女神が溢れる大商戦!注目の「婦人節」キャンペーンを追う③ 〜中国女性にインタビュー現代中国の女性とは?〜

前回まで紹介した3月8日中国「婦女節(国際婦人デー)」商戦。ではこの日、上海の働く女性たちはどのような一日を過ごしたのでしょうか?中国トレンドExpressでは「婦女節」のタイミングに合わせて上海入り、上海のビジネス界で活躍している方々にお話しを聞いてきましたが、お話しは婦女節から上海の女性の社会的地位、さらにはショッピングの習慣などにまで話が及びました。

まずは婦女節のお買い物状況についてからスタートです。

「婦女節」=「消費」の中国。ECもリアル店舗も

今年も盛り上がりを見せた「婦女節商戦」。しかし「商家は盛りあがるけど、実際のところどうなの?」といった疑問も尽きません。

まずは2019年の「婦女節」での買い物について「T-mallで1,000元ぐらいの買い物をしました」と語るのは上海のファッション系外資企業で働くLuciaさん(仮名)。

 

「T-Mallでダブルイレブンの時に買った化粧品の補充をしました! それとペットの猫用にキャットフードも!」と語るのはプログラマーとして活躍しているTutuさん(仮名)。

前回述べたようにT-Mall、JD.comといったECプラットホームが婦女節商戦を展開しています。

もちろん女性向けの商品がお得に買えることから、純粋なショッピングを楽しむこともありますが、中国最大の商戦である「ダブルイレブン」から約4か月が経過しているタイミングであることから、ダブルイレブンで購入した商品が「残り少ないため、その補充に婦女節商戦を活用する」という意味合いもありそうです。

 

話を進めてみるとTutuさんも、「まずはダブルイレブンでまとめ買いをすることを考えるけど、例えば無添加化粧品は品質保証期限が短いのでたくさんは買えない。足りなくなったタイミングがちょうど婦女節で、キャンペーン中だったので補充しました」と語り、同じEC商戦であっても、時期によって購入目的を使い分けているような印象があります。

 

さて、やはり若い人たちの話を聞く限り、やはり「婦女節」商戦はECを中心に回っているように見えます。

しかし、前回述べたように、中国の商戦としての婦女節は、ECの登場以前から展開されていたもので、「この日はウインドウショッピングを楽しむ」という習慣が中国の女性たちに根付いていたことがあります。

今回の取材でも小学校の教師であるYenさん(仮名)は「自分は閨密(guimi:親友の意)とプチセレブな食事会と百貨店でブランドのインナーを購入しました」と語り、またIT関連の会社で働くAmandaさん(仮名)も「やはり婦人節前後は自分へのご褒美を探したくなります。いつもより百貨店やモールに行く機会が増えて、特に新しい商品をチェックしています!」と話してくれました。

 

婦女節では習慣的に百貨店やモールに足を運ぶ比率が高まるようで、また店舗側も前回述べたようなあの手この手のイベント、キャンペーンを展開。

最終的には「婦女節=女性のためのイベント=自分へのご褒美探し=リアル店舗」と繋がっているようです。

 

とはいうものの、必ずしもそうならない女性もいます。

小学校2年生の娘を持つ、外資系企業で働くOlgaさんは「子どもができてからは、自分へのお祝いはしていないですね。でも、婦女節には子どもに食べ物や玩具、それに絵本を買いました。あと、母にもプレゼントを用意しましたね」とのこと。

やはり子供がいる女性の場合は、どうしても「子供優先」になってしまうようです。

 

しかし、前出のLuciaさんに言わせると、3月8日はやはり「婦女節ではなく女王節」とのことで、「男性が女性にプレゼントをする日の“ひとつ”」なのだとか。

「ひとつ」というからにはほかの日もあるわけで、Luciaさんいわく「春節、2月14日のバレンタイン、3月8日の女王節、5月20日の我愛你の日、あとは6月1日の国際児童デー……」。

ん?国際児童デーがなぜ男性が女性にプレゼントを贈る日になるのでしょうか?

「だって、男性は好きな女性をBabyって呼ぶでしょ?Babyは子供って意味、だから国際児童デーには私にプレゼントしなきゃ」。

いやはや、中国男性の苦労がしのばれます。

女性が強い上海。でも職場では…。

こうやって聞いてみると、婦女節の上海と時間と都市を限ってみれば、ずいぶんと女性が優遇されているように見えます。

日本でもジェンダーや多様化が語られ、そのなかで女性の社会進出・働き方などについての議論も展開されていますが、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2018年12月に発表した「The Global Gender Gap Report 2018」では日本は順位は149か国中110位という評価がなされていました。

では中国は、といえば149か国中103位と日本を若干上回っている様子。その現状についても話を聞いてみました。

(出典:内閣府男女共同参画局

 

まず「上海は女尊男卑(笑)」とは前述のLuciaさん。彼女曰く「家庭の給料を管理するのも、大事なことを決定するのも女性。妻や彼女の言葉は真理」とまで言い切ります。

またフリーランスのデザイナーAmaoさん(仮名)も「ほかの地方は知らないけど、上海は中国で一番男女平等だと思います!生まれてきて以来、不平等を感じたことが一度もありません」と語ってくれました。

 

確かに上海では女性の地位が向上、どころか「妻管厳(妻のコントロールが厳しいという意味で、気管支炎を意味する“気管炎”と同音)などともいわれる、「女性が強いエリア」の代表という印象があります。

ただ地方の経済発展が遅れている農村地域ではいまだに「男尊女卑」の意識が根付いているともいわれ、上海のような「男女平等先進地域」と地方のような「伝統的男尊女卑観念地域」の2極化が起こっているともいえそうです。

 

しかしながら、ビジネスの現場に目を向けてみると、完全に女性が優遇されているとは言い切れないようで、「私の職業は女性が多いので、男性の方が大事にされています。」(Yenさん)という言葉が。

Yenさんによると女性教諭はクラスの担任になることが多いとのこと。

担任になると、クラスごとにQQで保護者のグループチャットを作ってるので子供の成績や友達関係の様子など、「保護者たちはまったく遠慮なく、24時間質問してくるんです…」と、なかなかハードな様子。それに対して「男性教師は基本的に自分の担当科目に集中すればいい」とのことなので、ずいぶんと負担が少ないようです。

 

さらに給与面でも、やはり男性の方が優遇されているようで、IT業界のAmandaさんは「うちの旦那、出会った時には私の方が給料高かった。この10年で、2人とも何回か転職したけど、いまは彼のほうが給料が高い」と語るように、給与ベースは男性優先であるような現状がうかがい知れます。

 

そこに子どもの有無も女性の仕事に影響を及ぼしています。

「共働きと言っても、子供が熱を出したら大体私が休みを取る。出張や海外転勤はできないから、昇進も男性の方がチャンスはあるんじゃない?」というのは小学校2年生の娘を持つ、外資系企業勤めのOlgaさん。

さらにそこに年齢に関する意識も職場では影響するようで、Tutuさんも「転職の面接の時に、結婚や子どもの有無や、2人目は?などと露骨に聞いてくる。あとは“入社2年以内に出産しない”という制約書を書かされる会社も多いみたい」と語ります。

 

中国は過度の人口抑制政策による高齢化への危惧から2人目以降の出産も解禁しましたが、それによって女性採用に対する警戒感が高まっている様子がうかがえます。

2019年に入ってから、中国政府では面接時に結婚や出産に関する質問は一切禁止されたらしいのですが、「守っているのは外資や大手企業だけと思う」とOlgaさん。

 

能力があるがゆえに、こうした職場での「男性優先部分」にはストレスがたまる様子の上海女性。その発散がこの婦女節キャンペーンに向けられている…のかもしれません。