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今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.3 ~中国市場でのペルソナ、イメージできていますか?~

今回から少しずつカスタマージャーニー設定の具体的な部分に入っていこう。

カスタマージャーニーを考える上で、スタート地点であり、そして最も重要なのが「中国の消費者を設定する」ということ。すなわちペルソナ設定である。

このペルソナ設定に関しては、日本国内に関してすでに多くの論述があるが、中国市場におけるペルソナをいかに設定していくのかに関しては、実はあまり広く語られていない。

それは中国の変化が激しく、その把握が難しいという一面もあるが、難しいからこそ、可能な限りの設定をしておかねば、その後のマーケティング活動の精度が下がり、無駄な行動、時間やコストの浪費につながってしまう。

今回はまず、そんな中国におけるペルソナ設定の基礎情報部分から見ていこう。

ペルソナ設定時に考えなければならないこととは?

ペルソナ設定とは、簡単に言えばターゲット消費者の絞り込みである。その絞り込みには、大きく分けると以下のような要素が必要となる。

 

1.性別、年齢、居住地

2.職業や職位、年収

3.配偶者や子供の有無などの家庭環境

4.通勤や通学、起床や就寝、平日休日の過ごし方といった生活習慣

5.趣味、興味の対象

6.価値観や思考方向などの性格

7.情報、流行感度

8.インターネットやアプリケーションへの接触頻度

9.所持している、よく利用するデバイス

 

1~3は基礎資料として誰でも思いつくものではあるが、4以降はなるべく現実に即して落とし込んでいく必要がある。

 

こうした内容、日本人をターゲットにするのであれば比較的想像もしやすく、また基礎資料も集めやすい。しかし、社会環境の全く異なる海外である中国の消費者をイメージすることは、なかなか難しいものである。

オープンデータを活用した基礎資料

まず基礎情報に関しては、中国の公的機関(中国統計局や各地方の統計部門)が定期的に発信しているデータを活用してみるのもいいだろう。

ターゲットの性別は商材によって異なるため、まずは収入面を考えてみよう。

ちなみに中国の場合、収入と居住地は大きな関係がある。それは下の図を見れば一目瞭然だ。

【参考】2018年の直轄市、省、自治区別平均可処分所得の分布(単位:元)

出所:中国統計局のデータを基に中国トレンドExpress編集部にて作成

日本の商品は平均的に見て中国国内製品よりも価格が高くなる。そのため、自然と収入レベルの高い地域がターゲットエリアとなる。

現在、可処分所得において6万元を超えているのは北京、上海の2都市のみである。それに次ぐのが4万元台の浙江省や広東省。またそれに隣接した江蘇省といったエリアがそれに続く。

日本の企業がターゲットとすべきは、こうした省、直轄市の発展したエリア。一線都市、そして新一線都市とランク付けされる都市となるだろう。


▼参考記事
「〇線都市って何が違うの?」 中国都市ランキングの読み解き方・前編


中国の世代特性を再考してみる

続いて考えなければならないのは年齢層である。

社会が急速に変化し続けている中国では、その生まれた年代によって価値観や情報の取り方が大きく異なる。

ペルソナ設定では、こうした社会背景を考えながら、年代別の特徴を把握しておく必要がある。

-80後

日本でずいぶん前から「新たな消費層」と目され、ターゲットとされてきた世代である。

確かに、その前の70後たちとは異なり、生まれたときには文革およびその後の混乱は収束しており、まさに中国経済の発展と同時に育ってきた世代である。

海外の物への抵抗が少なく、市場経済の中で生み出される新しい商品を果敢にためしてきた世代であった。

現在はその世代も30代。最も遅い89年生まれでも30歳。

その多くが家庭を持ち、子育てをしながら社会の中核としてビジネスに携わる世代となっている。

 

経済的には最も成熟している年代であるが、1人っ子世代であるため両親の老後、また競争社会で子供が生き抜いていくための投資(塾や習い事、名門校への入学)など、多くのプレッシャーを抱えている世代でもある。

 

もともと化粧品(特にエイジングケア)やサプリメント、さらには子供向け商材などに対して関心が高く、購買意欲が高い世代だが、そうした現実的なプレッシャーによって、その購入に関しては、若い世代に比べると「堅実傾向」が見られる。

-90後

近年、日本・中国双方で「新たな消費ターゲット」と言われている世代。

小学生の頃にはインターネットの普及が始まっており、大学に入るころにはTaobaoなどのECが広く利用されていた世代だ。

 

こうした環境から、80後後半世代とともに中国のECをけん引してきた世代ともいえるだろう。

 

80後世代に比べてより満たされた環境で生活しており、消費に対しても貪欲。特に「生活上必要な消費」よりも「自己表現のための消費」をし始めた世代であり、価値観の多様化が生まれ始めた層と言えるだろう。

 

大都市においては晩婚化が進んでいること、また古い概念に縛られるのを嫌うため、独身率も高い、その分「自分たちへの投資」に使う余裕も出始めている。

そのため、高級商材に手を伸ばしやすい世代と言える。

 

化粧品においては、本来エイジングケアのターゲットから外れる世代ではあるが、「よりいいもの」を欲し、SK-Ⅱなどの、エイジングケア商材を使用することも広く見られる。

-95後

いわゆる「90後」世代なのだが、その前半と後半で消費傾向がやや異なる。

その最初の世代は今年24歳。大学を卒業し、社会人1年生~2年生と言ったところだろう。

 

彼らは実は物心ついた時には中国が「モバイル化」していた世代であり、さらにはWeiboそしてWeChatが登場し、本格的なSNS社会へ突入した時代に成長してきた。

則ち「SNS世代」である。

 

80後や90後も同じくインターネット世代ではあるが、PCからモバイルへと移行してきた時期、SNSのクチコミの誕生から発展を見てきた(SNS時代も体験している)世代。

だが、それに比して95後は物心ついた頃からSNSに囲まれて育ってきており、そのためにSNS上のクチコミや自分たちへの評価を強く意識する傾向も強い。

 

つまりよりSNS依存度が高く、現在のKOL消費の中心を担っている世代。「自分の価値観」を主張する割には、こうした著名人の影響を受けやすいと言えるだろう。

-00後

現在、前半世代が大学生・高校生として青春真っただ中へと入りつつあるのが、2000年後に生まれた世代。

こちらは完全にモバイル、デジタル世代。物心ついたころからタッチパネルが当たり前で、現在はキャッシュレス機能を難なく使いこなす。

 

いわゆる「6つのポケット(4人の祖父母と両親)」を持つと言われた世代で、大都市においてはまさに「何不自由なく暮らしてきた」世代である。

 

親も「自分たちのような苦労はさせたくない」と、物質的な充実感を与えることを重視する傾向があり、多くが「周りによって満たされてきた」世代であると言えるだろう。

 

その分、レベルの高い商品を好み、あまり価格を考えずに購入する傾向が多く見られる。とはいえ、まだ10代であるため自分のお金で購入する、ということは難しい。

ただ、流行や情報収集には敏感であるため、現段階からブランドを印象付け、将来的なファンにしていくことも考え得る消費層だ。

世代によって分かれる情報ソース

こうした世代による特性の違いだが、APPの利用状況も、年代によってだいぶ異なってくる。

 

例えば現在、中国でも日本でも注目されているクチコミ・ECアプリである小紅書(RED)だが、それもすべての消費者が使用しているわけではない。

 

上海で30代中ごろの女性に話を聞いてみると、最も信用する情報源として挙げられたのが、小紅書(RED)ではなく「WeChatモーメンツ」および「友人からの直接的な紹介」であった。

 

実際に小紅書(RED)のユーザー年齢を見てみると以下のようになる。

【参考】2018年小紅書(RED)年齢別ユーザー比率

このように、世代でいえば80後後半から90後世代が中心になっており、80後世代も前半に来ると急激にユーザー数が減っているのがわかる。

 

そのため、もしやや高めの年齢層をターゲットにするのであれば、実際に見ているのは小紅書よりも、より深い個人的なつながりを持ったWeChatモーメンツ上の投稿だろう。

 

また現在、意外に増えているのが「QQ」だ。

以前のインタビューでは、大学で生徒管理のためにQQのグループチャットを利用することから、95後から00後にQQのユーザーが増加している。

 

日本では「QQは古い、今はWeChat、小紅書だ」と思われているが、現状はまた新たな変化が生じ始めている。

 

基礎情報を見ていただけでも、漠然とした「中国消費者」というイメージではなく、地域、世代によってずいぶんと消費をめぐる環境が異なることがわかる。

さらにそれはリアルタイムで変化を続けているということを意識なくてはいけない。

 

次回(9月6日を予定)は、独自調査から見た、中国消費者のライフサイクルを見ていこう。