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スキンケアだけではない化粧品市場 成長中の中国メイクニーズをつかむには Vol.2 ~メイク市場切り崩しのポイントになるアイテムとは~

中国市場において欧米だけではなく、韓国ブランドにも差を広がられつつある日本のメイクアップ。その攻略のカギを探るべく中国トレンドExpressでは中国メイク意識クチコミ調査を実行。

その結果を少しずつ紐解くと、中国メイク市場に切り込む小さなポイントが見えてきた。今回は消費者が気になるアイテムからそれを見ていこう。

▼前回の記事は
スキンケアだけではない化粧品市場 成長中の中国メイクニーズをつかむには Vol.1

もっともクチコミ件数の多いメイクアイテムは?

本調査では「口紅」、「アイライナー」、「アイシャドウ」、「チーク」といったアイテムごとのクチコミを収集し、整理した。

その中で、まずは中国の女性からのクチコミの最も多いアイテム=気になっているアイテムを見てみよう。

下は今回の調査のクチコミをアイテム別に見たものである。

【グラフ】メイクアイテム別に見たクチコミ件数

結果は「ベースメイク」に関するクチコミが最も多かった。

中国のカリスマKOLとなった李佳琦の印象が強いせいか、「口紅」がトップに来るのでは?と予想をしてしまったのだが、

【グラフ】ベースメイクに関するクチコミの地域比率

これを見ると、上位は北京、上海の一線都市、ついで広東省と発展した地域が上位に来ているが、何れも10%未満で、ほぼ並びの状況。

上位集中度も35%と比較的低く、ベースメイクに関するクチコミは都市の大小に限らず、幅広いエリアの消費者に書きこまれていることが見て取れる。

つまりベースメイクは中国女性の普遍的な関心事と言えることができる。

ベースメイクで気になるポイントは色ではなく…。

ここでもう少しベースメイクに関するクチコミを細かく見てみよう。以下はベースメイクに関するクチコミキーワードのなかで、件数の多いもの15個を抜き出したものである。

【グラフ】ベースメイクに関するキーワード上位15位

もちろんより肌を美しく魅せる「発色」や使用感である「化粧ノリ」といった部分も気になるところだが、やはり「自分の肌質にあっているか」という点が気になるようだ。

下位にも登場しているが、自身を「敏感肌」、「乾燥肌」と認識している消費者が多い中国では、肌に塗るモノに関しては念を入れてチェックをしていることになる。

 

それは「成分」、「安全」といったキーワードがTOP10に入っている点からも見て取れる。

上海の30代女性に話を聞いたところ、ファンデーションなどのベースメイクには「色素」などの化学成分が多く含まれているため、「スキンケアと同レベル、もしくはそれ以上に成分が気になる」といった声が聞かれた。

 

こうしてみると、そのクチコミ内容、すなわちベースメイクに関する関心事はスキンケア商品に近い。

ベースメイクはメイクアップアイテムとはいえ、スキンケアと性質が近い。

 

そのためベースメイクの訴求においては、メイクアップで常に使われる使い勝手、カラーなどよりも、スキンケア寄りの安全性を訴えていくことが有効と思われる。

ベースメイク情報を求める世代は?

ところで、このベースメイクの「ボリュームゾーン」なのだが、メイクアイテムのクチコミを年齢別に見てみると、他のアイテムとは異なる点がわかる。

【グラフ】各アイテムの年齢別クチコミ比率

全体的に社会人になったばかりの20代後半が最も関心の高い層となっていることが見て取れるのだが、唯一の例外がこのベースメイク。

このアイテムのみはボリュームゾーンが19~24歳という、いわゆる大学生が中心となっている。

 

その背景を再確認しよう。

繰り返しになるが、中国におけるメイクアップデビューは多くの場合、大学生に入ってから。高校までは大学入試以外のすべてが否定される。

本来はメイクに興味を持つ年ごろではあるが、地方によってはそうした行為が勉強に影響する、という考え方の親や学校が多くあり、8月には地方の高校でお化粧をして登校した生徒の顔を、教師が正門で服取ってから学校に入れる動画がSNSに投稿されていた。

 

こうした過程を経て大学入学後にメイクが許された中国の女性。前出の上海在住の女性に話を聞いたのだが、「当時はいきなり派手なメイクをする勇気がなかった…」と当時を振り返っていたが、メイク初心者にとっては口紅やアイシャドーなどは、一目見た色で良しあし、好みを選ぶことができるが、ベースメイクに関しては「実際に使ってみないと良しあし、合う合わないがわからない」ため、より多くの情報を求めているのである。

 

また、クチコミキーワードに「成分」や「刺激」を気にする点においても「若い段階で、メイクの失敗によって肌を痛めたくない、というのがあるのでは?」(前出の上海女性)とも語ってくれた。

 

年齢を経るごとにベースメイクへの関心が減っていくのは、経験を積み重ね、自分に合ったベースメイクを見つけていると考えられる。

 

前回述べたように、クチコミを見る限り中国のメイク市場では日本ブランドは出遅れ感がある。しかし同時に市場そのものは拡大中であり、チャンスは十分にあるはずだ。

 

問題はそこに「どう切り込む」か、である。

 

その一つの戦略として、これからメイクを楽しむ世代、今回の調査でいえば大学生をターゲットにブランド浸透を図り、その後の市場展開を狙うというものがある。

その戦略に沿って考えれば、中国の女子大生に対する最初のアプローチアイテムとして「ベースメイク」というのは選択肢としてあり得るのではないだろうか。

またその際には、色や使い心地よりも、「成分」に対する十分な情報提供により、「肌質」にあった、「安全」な商品であることを訴求する、という手法が考えられる。

 

もちろん、そのターゲットが買いやすい価格設定にしていくという課題もあるが、中国メイク市場攻略のための戦略を「大学キャンパス」から見ると、新たな道筋が開きそうである。