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ジャック・マー不在の2019年ダブルイレブン ついにスタート!

今年もやってきた11月11日。中国最大のECイベントである「双十一(ダブルイレブン、独身の日)」。今回はアリババの創始者・馬雲(ジャック・マー)が引退してからの初めてのダブルイレブンとあり、多方面からの注目が集まっている。

ついにその幕を切って落としたダブルイレブン、今年の注目ポイントを再チェックしてみよう。

開始1分半で100億元、5分半で300億元。

ジャック・マー体制最後の年であり、ダブルイレブン10周年を迎えた2018年は、総オーダー金額2135億元、日本円で約3兆円という金額に達したことで、日本でも大きく報じられた。

 

2019年もすでに封を切ったが、開始1分36秒でオーダー金額100億元の突破、5分25秒で300億元が報じられた。

【グラフ】暦年ダブルイレブンのT-Mallオーダー金額推移

【グラフ】2018年ダブルイレブン1日のT-Mallオーダー金額の推移

これまでのT-Mall、JD.comに加え、二線、三線都市で広がっていたPDDによる三つ巴の戦いが注目されている。

 

調査会社「極光(Aurora Mobile)」によるとECのモバイルアプリ10月日平均DAUを見ると、淘宝スマホアプリが2.89億人/日に対してPDDが1.23億人、JD.comが0.44億人となり、DAUで見るとPDDが2大アプリに割って入る形になっている。

ひょっとするとT-Mallの牙城も…と思いがよぎるが、筆者が10日の中国時間19:30(日本時間20:30)から始まった前夜祭「2019天猫双十一狂歓夜」を見ている限り、昨年よりも「アリババ的」なものが薄れ、制作サイドである浙江衛星電視が得意とするバラエティー番組のイメージが増したような気がしたが、それでも、全体の勢いは健在といった印象を受けた。

売上で見れば、すでにエスティローダーが11月6日時点でオーダー金額10億元を突破しており、昨年以上の伸びが期待されている。

その他、化粧品メーカーではHome Facal Pro、WINONAなどのローカル系ブランドの好調も伝えられている。

 

その影で、業界内でわずかながら波風が立ったのが、こうした今年のダブルイレブンの人気商品に対する予測である。

北京のビッグデータリサーチ企業であるVenn Dataがダブルイレブン予約期のデータ分析とともに「人気セグメント1位はコスメ、これまでトップだったアパレルの人気が低下」という調査結果を発表したが、アリババがそれに対して疑義を提起、最終的にVenn Data側が調査結果をサイト上から削除する処置を取るなど、やや情報に混乱が見られた。

こうした騒動も含めて、今年は人気品目の変化にも注目したい。

 

もう一つ今回のダブルイレブンでいろいろな意味で注目が集まっているのが「ライブコマース」である。

 

今年は中国政府からまずKOLがライブコマースで販売する際に「広告法」を含め、消費者権益の保護に力を注ぐように求める管理を強化する通達が出されるなど、一見するとKOLによるライブ配信に逆風が吹いているようにも感じられた。

 

また直前にカリスマKOLの李佳琦のフライパン(焦げ付かないのが売り)のライブコマースが物議を醸すなど、KOLの信憑性に対して消費者が疑問を持つ、というケースもあった。

 

しかし、実際にはライブコマースはより盛り上がりを増し、ロレアルなどのブランドがライブコマースで売り上げを上げているという情報もある。

 

24時間走り切った後の結果に注目したい。

今年もみえる「政府」とアリババの距離

今年は先の「脱貧」というキーワードが現れた。これは国の施策である貧困地区の支援のこと。

 

すでに2018年のダブルイレブン、2019年618ではT-Mallの農村物産販売実績がメディア露出をするようになっていたが、今年は明確にその路線も打ち出し、10日夜のオープニングイベントにおいても特設「脱貧」コーナーを設けるなど、貧困地区支援に積極的な姿勢を見せている。

その背景にあるのは、貧困支援プロジェクトにおける政府によるEC、特にライブコマースに対する参画である。

11月1日には中国広電総局から「ダブルイレブン期間におけるライブコマースの監督強化に関する通知」が出された。

その内容は主にライブコマースにおける綱紀粛正、消費者権益保護であったが、その通知において「貧困地区の産品販売へのEC、ライブコマースの積極的な“支援”」を求める方針が示されており、

 

中国は2020年を全面的小康社会(総中流社会)完成の年と位置付けており、そのためにも貧困地区の経済状況の改善が急務とされている。

そのなかで、中国消費者に対して大きな影響をあたえるライブコマースの拡大は中国政府も無視できないようで、その活用を進めている様子である。

前述のライブコマースに関する管理が厳しくなりながらも、より盛り上がりを増しているのはそうした行政の思惑があってと考えられる。

 

創始者が去り、初めて迎える正念場。企業にとっても、主催者にとっても勝負の24時間となりそうだ。

 

<追記>

T-Mallはスタートから12分49秒で「500億元」、17分06秒で「571億」(2014年のダブルイレブン記録)と2018年より速いスピードで売り上げを伸ばしている。

スタートから1時間1分32秒で2015年のオーダー金額である「912億元」、1時間3分59秒で「1000億元」を突破。2018年は1000億元突破に1時間47分26秒を要していた。

1時間26分07秒、2016年のオーダー金額「1207億元」を突破。11日が月曜日ということもあり、消費者が「短期決戦」を挑んでいる可能性もあるかと思われる。

2時間37分51秒で「1314億元」を突破。化粧品ではロレアル、LA MER、自然堂、MACが好調との報道。