2020年も中国から目が離せない 注目すべきトピックスは?
いろいろあった2019年もようやく過ぎ去り、2020年、日本にとっては非常に重要な一年が始まった。来るべきビッグイベントに向けて、日本の企業でも準備が進められている。
その中で重要なポジションを占めるのが「中国」。その消費者の動向は、中国事業担当者ならずとも注目しているところだ。
そこで2020年のスタートは、少しマクロな視点から今年の中国市場を戦うための重要トピックスを確認していこう。
中国でも熱気高まる下沈市場
現在、中国国内でも注目されているのが3線都市以下から農村にかけての政策である。
2020年は「全面的小康社会完成の年」と位置付けられており、中国が長く目標としてきた小康社会、すなわち「国民全体が生活に余裕がある社会」が出来上がる1年となっている。
その中でネックとなるのが地方都市や農村部の経済発展。
北京、上海、広州、深圳の4大一線都市、そしてそれに次ぐ15の新一線都市などは順調に発展を続けているものの、それらの衛星都市である二線都市、そしてさらに三線以下の都市は、まだまだテコ入れが必要な状態にある。
しかし、中国の現政権としてはこうした状況を改善し、「何としても目標を達成させたい」という強い気概を持って臨んでいる様子で、年初の報道でも国のリーダーが地方都市や農村訪問を紹介。「地方経済躍進」の機運を高めている。
なかでも真っ先に取り組んでいるのが下沈市場の消費力を広げる施策だ。
地方都市とはいえ、人口ボリュームでは一線、新一線を大きく上回っており、またその構成上若者が多い。
さらに不動産ローンの負担がない消費者も多く、その分可処分比率が高まる。しかし消費環境としては「ハイエンドブランドの未進出」、「娯楽の単調化」など、お金の使い道に乏しい状況が続いていた。
中国としてはこうした環境にある消費者と、よりよい商品を結びつけることで、中国国内の消費向上を促したいという狙いがある。
2017年中国都市ランク別人口構成
一、二線都市と下沈都市若者層のローン有無比率
その国の姿勢は2019年からすでに見え始めており、特に中国の消費を担うEC業界ではこうした国の動きに素早く反応。下沈市場を重点ターゲットに置き市場開拓に注力してきた。
2020年はその動きがより加速されるとみられ、各小売プラットホームの下沈市場施策の波に乗れるのかが、メーカーの思案のしどころとなる。
実は「下沈市場」、中国国内では三線以下の都市とされることが一般的。しかし、長らく一線都市をターゲットにしてきた日本企業にとっては二線、なかには新一線都市も「未知の空間」という声も。
巨大で多くの格差が存在する中国市場においては、すべてを全体的に網羅することは難しく、平均に頼ることができない。
そのためにも、担当者が自身で中国のデータを収集しつつ、直接現地に足を運ぶなど、頭と体の両方を使って市場理解を深めることが不可欠となるだろう。
ライブコマースの新趨勢とKOL
中国国内のおける市場開拓の重点ポイントが移ると同時に注目されるのは「モノの売り方」である。
中でも2019年のダブルイレブンはまさに「KOL×ライブ×EC」の組み合わせが爆発した年となった。
ライブコマース自体は2017年、18年から積極的から商戦期の重要な施策として活用されてきたが、2019年ほど大々的に展開されたのは初めてであろう。
その背景にはKOL市場の発展が挙げられる。
すなわち商品情報の発信源としてのKOLの存在が大きくなり、同時に「トップKOL」と呼ばれるカリスマインフルエンサーの登場によって、ライブコマースを大々的に展開する土壌が整ったという面がある。
2019年のダブルイレブンには政府も「公的に」ライブコマースを活用した農村経済の活性化方針を明確にし、Taobaoのライブコマースにおいても農村ライブコマースに注力。
とはいうものの、KOL市場は発展したものの、「成熟」にはいまだ時間を要すると考えられる。
トップKOLである李佳琦の「フライパン騒動」や「上海蟹騒動」、また一部KOL、MCNによる「データ水増し騒動」など、細かなトラブルが多く報道された。
その影響もあって、中国はKOLの存在をよりクリーンにすべく、市場の監督に乗りだしており、2020年はそれが本格化するものと考えられる。
こうした中国における情報発信者への動き、政府の公式見解の把握とその読み解きがより重要性を帯びてくる。
「新型肺炎」はどう影響するか?
さて、2019年末から年初にかけて気になるニュースが中国、そして日本でも報道された。
湖北省武漢市で発見された「原因不明の肺炎患者」である。
1月9日には原因は「新型のコロナウイルス」である可能性が高いと公表されており、大きな混乱は見えていない。
この時、多くの消費者の頭をよぎったのが2003年のSARSであった。
当時、感染拡大を防ぐために学校などが休校したり、会社も業務を停止したりと、多方面で人の行き来を規制する措置が取られた。
筆者も当時、上海で生活していたが、普段はすし詰め状態の上海地下鉄1号線でも、全く人がおらず、また、その際は現在のようなSNSはなかったものの、携帯電話のショートメッセージなどで不確定な情報が飛び交い、恐怖とともに事態の重大さを体感した。
幸いその際は短期的に終わったために、中国経済への影響は限定的にとどまったが、多くのアナリスト、エコノミストが「長期化すれば悪影響が出てくる」との見方を示していた。
その時期と最も状況をこととするのが日本のインバウンド市場である。
2014年ごろから始まった中国の訪日観光ブームは現在までも継続しており、日本にやってくる外国人観光客の1/4を中国人観光客が占めている。
しかし、万が一今回の肺炎がSARS並みの流行を見れば、中国消費者も日本への観光どころではなくなるか知れず、また日本政府としても感染源国からの入国に神経をとがらせざるを得なくなる。
今後の動静には注意をしたい。
日本も国際的ビッグイベント迎え、イン・アウト双方での海外市場取り込み機運が高まっているが、そこで大きなインパクトを与える中国でも、別の意味で大きな変化を迎える年となる。
中国ビジネスに携わるすべての事業者は、中国の経済、政治、消費という枠を超えて、より広い視野で情報を集める必要に迫られている。