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“天猫88”で夏を制してダブルイレブンへ~中国小型商戦の賢い使い方~

上半期最大の商戦618が終了した。

今年は普段とは個なる環境の中、普段とは異なる盛り上がりを見せた618.それが終わったところで少し胸をなでおろしているブランドも多いはずだ。

そして考えるのは11月11日までの5か月近い時間なのだが、この期間の過ごし方でダブルイレブンの過ごし方が決まるといってよい。

その大きなポイントが「夏」だ。

あまり日本では注目されてはいないが、実は使いようではダブルイレブン攻略の大きな布石となるこの夏の商戦を紹介しよう。


ダブルイレブンのためにも夏は無駄に過ごせない

どこかの学習塾のセリフではないが「夏を制する者がダブルイレブンを有利に戦える」のである。

 

実は中国のEC商戦は618、ダブルイレブン、ブラックフライデー、春節などにとどまらず、小さな商戦が数多く展開されている。

その代表的なものが「3・8婦人節(女王節)」であるのだが、それ以外にも「5.5」、「8・8」など、数字が重複する日に小型商戦がコンスタントに展開されているのである。

(日本同様、月と日の数字が重なる日は縁起がいいとされる)

 

ここで基本に立ち返ろう。

中国市場開拓で極めて重要なのは「認知度という資産を蓄積させること」である。

中国の消費者は知らない商品を手に取ることはない。そして、より高い認知度に安心感を得て購入する傾向が日本よりも強い。

 

その基本から考えるに、ダブルイレブンで効果を上げるためには、ダブルイレブン前にその認知度が蓄積されていなければならない。

ただ、消費者のマインドで見ると618が終わった段階で、興味がやや低下するのが常である。企業もプロモーションの手を緩めるため、ブランドや商品のクチコミ件数も減少するのが常である。

 

それをそのまま放置すると、競合ブランドが積極的にプロモーションを展開している場合、自社のブランドの認知度は競合のそれに埋まってしまう可能性がある。

とはいえ、単純にプロモーションだけを流しても、購入に結びつかない宣伝は消費者の興味も引きにくい。

 

そこで活用すべきなのが、上述したダブルイレブンまでに行われる小型のEC商戦である。

今回はそのなかから8月にT-Mall Globalが行う「88商戦」を例に見てみよう。

「88商戦」から見る小型商戦活用メリットとは

今回紹介する「88商戦」とは何か?

あまり日本では定着しておらず、知らない読者も多いかもしれない。

 

同イベントはT-Mallの越境ECプラットホームである「T-Mall Global」が行う越境ECキャンペーン。

世界中の輸入ブランドと協力し、このシーズン(夏場)において最大規模の割引を設定したり、ダブルイレブン同様にモール内で強烈なクーポン割引券と合わせて使えることでお得に海外商品が購入できるものである。

 

この88商戦には以下の特徴が狙うべき背景として考えられる。

参加するのは「越境」商品

この商戦の主体となっているのは「T-Mall Global」、すなわち越境ECプラットホームであること。

その他のプラットホームも追随をしているが、「越境」という分野では一致している。いわ越境モデル限定の「プレ・ダブルイレブン」である。

ダブルイレブンなどの大型商戦ではT-Mall Globalにおける国別人気ランキングにおいて、日本商品は常に上位(2019年は1位)となっていることから、日本ブランドにとっては非常に有利な環境といえるだろう。

ターゲットは天猫の会員

この商戦でターゲットとなるのは「88VIP会員」、つまりT-Mallの特定の条件を満たした会員たちだ。

これは2018年8月8日、アリババグループが作り上げた新しい会員であり、この88もその会員サービス企画として始まり、VIP会員のために行う越境ECキャンペーンとなったのである。

広く消費者全体を対象にするのではなく、同プラットホームへのロイヤリティが高く、かつ積極的な購買意欲持つ層を深く取り込むのがこの商戦なのである。

<88VIP会員とは>

  • 「淘气值」という会員の評価システムで点数が1000点以上かつ88元を払えば88VIP会員になることができる。
  • 評価システムの項目は買い物金額、コメントの回数及び個人情報の記入が含まれている。
  • 88VIP会員はTaobaoの最高級ランクの会員のため、様々な特典が適用される。

新世代消費者の取り込み

2018年の8月8日に行われたこのイベントでは、T-Mall Globalのユーザー数が前年同日の倍以上を達成したが、特に90後、95後という次世代消費者のユーザー数が113%増加、さらには消費額150%も伸びるなど、大きな反響を得ている。

 

こうした95後世代のいわゆる「Z世代」は新しい価値観と高い消費意欲と能力を持っており、現在中国市場においてもその特徴の分析、研究が進められている注目の消費層である。

そうした世代をここで取り込んでおき、それをダブルイレブンで充分に活用していくことで成果を上げることが見込める。

トップクラスのKOLをリーズナブルに使って認知度醸成

もう一つ、88商戦含めた小型商戦のメリットを述べておきたい。

それはダブルイレブンのような大型商戦期に比べ、プロモーション費用を抑えての展開が可能となることだ。

 

ご存知のように中国では現在、プロモーション費用はうなぎのぼり。旺盛な消費意欲を持つ中国の消費者に向け、世界のブランドに加え力をつけてきた中国国内ブランドがシェアを奪い合っているのだから、それにかけるプロモーションにも自然と力が入るのである。

 

その価格は618やダブルイレブンといった大型商戦時(すなわち繁忙期)には大きく跳ね上がるのだが、逆に小型の商戦時にはややリーズナブルな価格に落ち着くことが多い。

カリスマKOLも大型商戦期に比べて低コストでアサインできるというのも魅力

とはいえ、カリスマKOLが持つ影響力が損なわれるわけではなく、プロモーションプランを設定することでカリスマKOLからマイクロKOLやソーシャルバイヤーにも「同款(有名人との同モデル)」という波及効果を期待することもできる。

さらにブランドとしては、ダブルイレブンまでに「カリスマKOLが紹介していた有名商品」という印象を定着させておけば、ダブルイレブン直前のプロモーションでも、それをうたい文句に使うこともできる。

 

当然、商戦であるからには「売上」を望むことも可能だが、ダブルイレブン向けの認知度資産の積み上げという点、またそこにかかるコスト低減の意味でも、夏の小型商戦は押さえておきたいところだ。

 

※今年の88商戦期間:8月4日~8月7日(予熱期)、8月8日~8月9日(本番)