【column】2020年中国消費市場を振り返る
2019年に2020年がこのような年になるとはだれが予想しただろうか? この1年で世界的に生活様式や価値観が大きく変化。その波の中ですべての人が悩み、もがいた1年となった。
それは中国においても同じである。
では、間もなくやって来る2021年はまた如何?
それを探るべく、2020年の消費データを眺めてみた。
全体の転機は夏ながら、先んじた市場競争も~2020年中国消費
12月15日に2020年11月の「全国社会消費品小売総額」が発表された。
その内容については、すでに複数の報道で報じられているように、2020年11の中国社会消費品小売総額は3兆9514億元。2019年の同時期に比べると5%の増加となった。
中でも目覚ましかったのは「化粧品類」である。
11月の化粧品類の消費は511億元で、同期比32.3%もの成長を見せた。
もちろん要因は日本円にして約7兆9000億元と過去最高のオーダーを取り付けたダブルイレブンである。
しかし11月単月で見ると、昨年の同月の消費を上回っているのだが、1月からの累計で見ると「-4.8%」と昨年を下回ってしまっている。
やはり第1四半期の新型コロナによる消費の影響が大きい。
下のグラフは2020年における各月の社会消費品小売総額前年比の推移である。
これを見ると、全体として2019年比で増加に転じたのは8月に入ってからであった。複数の都市のロックダウン、全国的な移動制限、しかも消費の伸びる春節シーズンにそれが行われたことで消費は大きく滞った。
それが夏まで続いていたことが見て取れる。
【グラフ】2020年各月の社会消費品小売総額前年比推移
出所:中国国家統計局
中国や日本では「急回復」といった印象が報じられるが、実際に消費が昨年レベルに戻ったのは8月に入ってからなのである。
さらに全体の推移に「中・西医薬品」、「化粧品」、「日用品」の同期比を合わせて見てみよう。
【グラフ】2020年各月の社会消費品小売総額前年比推移(「中・西医薬品」、「化粧品」、「日用品」)
出所:中国国家統計局
新型コロナによってマスクや消毒薬などの医薬品はマイナス成長をすることはなかった。また日用品もいち早く3月には増加に転じた。
そして化粧品も4月にはプラス成長に転じ、618を含む6月には20%、ダブルイレブンでは30%を超える成長を見せている。
自動車やジュエリーに関しては本格的なプラス成長に転じたのは7月以降。すなわち中国消費の転換期は夏だったことが見て取れるのだが、日本企業が得意とする化粧品、医薬といった分野は早い段階から立ち直りが始まり、商戦でも大きな盛り上がりを見せた。
それは中国の消費者が未曽有の「新型コロナ禍」で経済的に打撃を受けた後に、「何に対してお金をどのように使うのか」が見えたようにも感じる。
全体としては夏に至って回復に転じたが、化粧品業界などは一足早く回復期に入り、それに応じた中国国内、欧米ブランドがマーケティング活動を強化、消費者の獲得競争に入ったといえる。
伸長する中国ブランド、新消費層。勝負の決め手はデータと決断。
では、2021年にはどのような市場競争が行われるのだろうか?
中国のシンクタンク「CBN Data」は12月、自社による調査や公開されているレポートから、2020年の消費者の変化を分析するレポート『2020中国互联网消费生态大数据报告』を公開した。
そこには2020年中国消費者の10大特性が紹介されているが、注目すべきものの一つに「中国ブランドの伸長」を上げている。
同レポートでは中国の検索エンジン・百度のレポートを引用、2009年に百度ユーザーの4割弱程度しか関心を示さなかった「中国国産ブランド」だったが、2019年には7割のユーザーが関心を示すまでになっている。
【グラフ】2009年と2019年の百度ユーザーのブランド関心比率
<2009年>
<2019年>
出所:『2020中国互联网消费生态大数据报告』(CBN Data)『百度国潮骄傲大数据』(百度)
2019年ごろからは本格的に「国貨」、「国潮」ブームが過熱しはじめ、中国の老舗ブランドではリブランディングが、また同時にSNS社会を代表するかのようなデータドリブン方式でシェアを広げる新鋭ブランドが勃興。
特にメイクアップ業界においては後者が市場を席巻し、ダブルイレブンなどでも設立数年の新鋭中国国内ブランドが大きく躍進している。
その背景と切っても切れないのが、消費市場に対する中国Z世代の本格的参入であった。
彼らは物心ついた時には発展神続ける力強い中国を見、その中で生きてきた世代である。それゆえ、それを意識させるもの、例えば栄華を極めた時代の意匠などに対し新鮮さと強い興味を感じる傾向が強い。
同時にネット社会の原住民であり、中国においてはSNS社会の中で成長してきたZ世代は、複数のSNSで飛び交う膨大な情報を活用し、自身の悩みや需要ばかりか、それを解決する商品に関する深い理解を得ることに長けている。
その両者を新鋭中国ブランドは活用したといえる。
中国伝統文化を感じさせるデザインや華やかなカラーバリエーション。またそれに関するSNS発信、それに対するZ世代消費者の反応。
それらをすべて分析し、次の内手を素早く打つ。PerfectDiary(完美日記)や花西子などは、まさにこうしたZ世代の特性をデータから判断し経営に反映させることで成長してきた企業といえる。
こうした動きは2021年もよりスピードを速めながら展開されるはずだ。
特に、次回以降に言及するが、こうしたZ世代を中心とした中国消費者に刺さるマーケティングが、また変わりつつある。
2020年は確かにライブコマースが盛り上がったが、それに関する弊害にも消費者は気づき始めている。
そのため、いかにして消費者が信頼する次なる情報発信元、購入ポイントをデータ上から判断し、決断していくか競争のポイントとなる。