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【315速報】コロナ禍からの脱却を 2021年中国消費者権益の日を読む

コロナ禍の大きな影響を受けた2020年。

そこから1年が過ぎ、中国ではコロナ以前との変化はありながら、消費が回復しつつある。今年の両会(全国人民代表大会と政治協商会議)でも「国内大循環、国内国際双循環」が提起されるなど、国内・海外との消費のつながり、消費の盛り上げが重要な施策として提起された。

その中で必要なのは、より安心感のある消費環境。2021年の3月15日消費者権益の日の特別番組・315晩会は、「提振消費、重新開始(消費を振興させ、新たなスタートを)」というスローガンのもと、一定の緊張感を伴って行われた。


IT大国の抱える悩み。かつての人気業種「顔認証」も批判に

IT大国として知られている中国。しかしその闇も広がっており、冒頭ではそれらデジタル社会の問題が提起された。

 

なかでも問題視されたのは「顔認証による来店者情報のデータ化」である。

 

法律上はこうした個人情報は「対象者の同意の元提供する」と定められており、同意がないデータ収集は不法行為。

中国が誇るIT技能であるが、今年の315では店舗が顔認証技術を利用し来店者の個人情報を一方的に取得する手法として濫用されている点を指摘している。

指摘を受けたのは、浴槽や便座などのメーカーである「KOHLER」、自動車の「BMW」、またレディースアパレルの「Max Mara」など。

これらは上海、蘇州、深圳の顔認証IT技術企業の製品を購入し、中国の全国の店頭に取り付けたカメラで来店者の顔データを取得。来店者の性別、おおよその年齢層、入店時の心境、入出店の時間など読み取り記録していた。

 

店舗としては自店を訪れる顧客データ作成であったのだろうが、消費者の許可を得ない情報取得として批判の対象となった。

 

かつては世界を牽引する中国のIT技術として紹介されていた顔認証システムだが、その濫用が問題となり315でも批判の対象となった。

 

そのほかにも携帯電話内の不用データ消去アプリの形をした、個人情報の取得システム。またインターネット転職サイトの登録データの転売、詐欺利用など、ネット、デジタルを利用した不法行為を冒頭で紹介。

日進月歩で進む中国のIT技術と同時に広がるデジタル活用問題への注意を呼び掛けた。

健康志向に向けた健康食品不法広告

中国の健康食品(サプリ)の広告には厳しい関連規定が設けられている。しかし、こうした健康食品ニーズは年ごとに高まっており、国の広告規定を掻い潜ってのマーケティングは後を絶たない。

 

まさに315の常連業界となっているが、今年の315でもそうしたサプリの違法な広告出稿が批判の対象となった。

 

手法としては、360検索などにおけるリスティング広告である。

いずれも体験記事の体裁を取り「血圧を下げる」、「ダイエット効果」などのキーワードで検索されるようなページを作る。

開けば実際の使用者を思わせる体験記事があり、問い合わせのWeChatアカウント。そのアカウントの先には言わゆる「専門家」がおり、症状に関する「専門な意見」ののちに健康食品を販売する、というものである。

 

中には一部の広告代理店が広告資質の無い健康食品企業のために広告許可などを偽造し、360検索の検索広告に出現させるといった手法も紹介された。

 

今後はこうした検索サイトだけではなく、形を変えたインターネット上での健康食品広告全般への管理も強化されると考えられる。

別枠での指摘が行われた「ライブコマース」。新規定施行の発表も

今回の315でECなどの具体的な指摘は無かったが、中国関連部門が力を注いでいる問題として「インターネット消費における消費者権益保護」が述べられ、新たに『網絡交易監督管理弁法』の施行が発表された。

これは、ECプラットホームおよび「ネット上での販売に関わる存在の責任の明確化」という表現で、ライブやKOLなど、インターネット上の交易に関する存在の責任を明確にしていく方針を述べていた。

 

315晩会に先立つ同局の特別番組「3.15行動」では、消費者協会の幹部を招いた討論が行われたが、そのなかでは「ライブコマース」が明確な議題として挙げられていた。

 

ライブコマースに関しては依頼企業に対するデータの偽造のほか、ライバーによる広告法に準拠しない表現、例えば「最高峰」、「第一」などの言葉を用いた宣伝、リンクの偽造、また紹介した商品とは異なるニセモノの販売といった行為が消費者権益の侵害として指摘され、今後の課題として提起された。

 

中国ではライブコマースの広がりとともに、広告法の適用などの曖昧な部分が多く、それによって不法な利益を得る企業が増えていることが指摘されている。

今後はインターネット上の消費行為を管理する法律を基に、その管理が一定レベル強化されていくことが予想される。

この新たな法規制のもと、今後のライブコマースを含めたEC上の販売、またそのプロモーションに関して何かしらの行政施策がある可能性があり、その動きには引き続き注視しておきたいところである。

 

今回の315の特別番組では他には「痩肉精」という薬を飲まされた羊肉、また古い鉄筋を再精錬して作られた基準値に満たない鉄筋、簡単な修理に法外な価格をつける高級時計修理店、フォードやインフィニティなどの高級車におけるギアボックス異常への不合理な対応といった、生活に密着した消費の非合法行為が指摘された。

そうした施策、政府の姿勢を見せることで「より安心した消費環境」の構築を訴え、中国国内の消費を再び振興することが中国政府の急務となっているようだ。