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【Special Interview】インサイトドリブンの商品開発を実現 「中国ファースト」が切り開く化粧品市場の未来 ―株式会社コーセー

世界でも第2位の化粧品市場となっている中国。その市場を求めて世界から強大なプレーヤーが集まり、市場競争も激化している。

そうした中国市場に対して、株式会社コーセーはSNSインサイト分析を活用しつつ、「中国ファースト」の志向で商品開発を進めている。

今回は、新商品を中国先行で発売した同社の堀田昌宏取締役に「中国ファースト」志向の背景とインサイト分析の活用について話を伺った。

<Guest>

堀田昌宏
株式会社コーセー 取締役 商品開発部長

大学卒業後、<化粧品メーカー>株式会社コーセー入社。企画部・商品開発部など長年マーケティング本部企画開発部門に携わる。コーセー企画部課長・ブランド開発室長を歴任し、その後10年間は国際事業部の海外商品部長・国際運営部長として東アジア・東南アジアを中心に広くインド、欧米エリアを担当。またトラベルリテール事業責任者も兼任し、日本・中華圏の免税ビジネスの基盤構築を実現した。

2017年-2019年春まで高絲化粧品有限公司(中国現地法人)総経理として上海に着任。飛躍的に実績を拡大し中国マーケティングを積極的に展開した。2019年から執行役員 商品開発部部長として、経営テーマとなる”モノづくり改革”に着手し、グローバルマーケティングを推進。2021年6月、取締役に就任。

 

<Interviewer>

濵野智成
株式会社トレンドExpress 代表取締役社長

大学卒業後、世界有数のコンサルティングファームであるデロイト・トーマツ・グループに入社。120社以上への経営コンサルティング支援を行い、グループ最年少のシニアマネージャーとして東京支社長、事業開発本部長を歴任。

株式会社ホットリンクに参画後、COO(最高執行責任者)としてグローバル事業、経営企画、事業開発、戦略人事、コーポレート部門を統括。新規事業として立ち上げた株式会社トレンドExpressをカーブアウト型で分社化して代表取締役社長に就任。累計資金調達12.8億円を先導し、クロスボーダービジネスの先駆者として東京と上海をベースに活動中。

インサイトドリブンの消費者分析と商品開発を実現

濵野 本日はよろしくお願いします。そもそもお付き合いのきっかけは、堀田さんが上海にいらっしゃる時期にトレンドExpressに関するメディアの記事をご覧になってからだったと記憶しています。

 

堀田 そうですね。私が中国法人の総経理時代に、貴社がメディアに取り上げられていて、興味をもってお話しさせていただいた、というのがきっかけでした。

 

濵野 そうした中で弊社ともお付き合いが始まったわけですが、そもそも堀田さんがソーシャルインサイト分析に興味を持たれたきっかけはどういったものだったのでしょうか?

 

堀田 コーセー中国に総経理として赴任していた時、ちょうどコスメデコルテが中国市場で成長しており、日本国内でもインバウンド、いわゆるトラベルリテールを含めて、中国事業全体が成長している時期でした。

コーセーが中国市場に進出して30年という節目の時期で、これからを見据えてより解像度を上げて中国市場や中国消費者と向き合いたいと思っていました。

しかし、従来ある定量、定性調査というやり方では生の声が聞こえてこない懸念もありました。

 

同時に特に私自身が中国に住んでいる中で見たのは、情報の受発信がWeiboWeChat、REDなどのSNSやオンラインを中心とする社会。

「こうしたSNS上のつぶやきの内容、それをどのようにつぶやいているのかを分析できると面白い」と感じ、そういったSNS分析を通じた消費者調査ができるところを探そうということになったわけです。

 

ただ当時、SNSインサイト分析を得意とする会社がなく、さらに日本の企業で、日本語で日本人経営者にプレゼンテーションできる企業というのはトレンドExpressさんぐらいだったと記憶しています。

 

濵野 そうして実施頂いたSNS分析ですが、実施してみてのご感想や得られたものなどを聞かせいただけますか?

 

堀田 収穫としては「雪肌精」、「コスメデコルテ」などに対して、中国の消費者が抱くイメージが具体的に見えてきたことですね。

特に、クチコミの「ポジティブ」、「ネガティブ」の内容を具体的に、かつ体系的に把握できたこと、消費者のインサイトが深く理解できたことが良かったと思っています。

従来の調査では「いいこと」は比較的容易に入ってきますが、それに加えて「悪い評価」も一対になって入って来たことは、自社ブランドを正しく分析するうえでも有益でした。

そこから、「雪肌精」や「コスメデコルテ」の中国戦略に大きなヒントが得られました。

「SNSインサイト調査でブランドのポジションがより深く把握できた」と語る堀田取締役

濵野 その後、堀田さんは日本に帰任されて商品開発部長に着任されます。その後も中国市場、そして弊社とのお付き合いは続いているのですが、中国市場を重要視されるのはどういった理由によるものなのでしょうか?

 

堀田 そうですね、2019年春に日本に帰任となったのですが、国際事業部として仕事をしていた2009年ごろから中国とは付き合いがありました。

特に中国の消費マインド、化粧嗜好の変化には大変興味があったのですが、それを商品開発でも生かしていこうと考えたのです。

 

商品開発部に着任し「中期3か年計画」を立てた際にマーケティング戦略の中心になるのは、やはり日本・中国・アメリカの3か国だと考えました。

特にグローバルで化粧品市場を見た時、美容液はそのスキンケア市場の約30%と、最も巨大な市場であり、ライバルが多い市場です。

それでいて、中国の女性は美容液が大好き。「美容液」から始める、効果の高い「美容液」を選ぶというニーズも強くあります。

 

そうした経緯で、研究開発プロジェクトを掲げ、新しい市場をどう考えるかというプロジェクトを2019年から開始、今回「雪肌精 クリアウェルネス V セラム」という商品をその成果の第1弾として世に送り出すことになりました。

 

これはトレンドExpressさんの協力をいただきながら中国市場を中心に調査・分析を行ない開発した商品で、2021年10月に中国で発売となりました。日本での発売は同年12月なので、中国先行での発売となります。

中国市場先行で大きくプロモーションを打って発売していくのは、この商品が初めてです。

中国先行発売となった「雪肌精 クリアウェルネス V セラム」

この「雪肌精 クリアウェルネス V セラム」は自然由来87%の商品。

そこには、中国の今の消費者は「自然由来」というポイントに日本人以上にこだわりが強いという背景があります。

「地球の恵みと潤いのしずく」というのがテーマなのですが、このテーマに中国消費者も反応していますし、商品に対しての反応も良いと聞いています。

「中国ファースト」での商品開発を具現化

濵野 中国先行発売というのは非常に興味深いお話です。「雪肌精 クリアウェルネス V セラム」が生まれた背景をもう少し教えてください。