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宮田将士の上海だより(2)消費者の生活環境はマーケティングのヒントに~中国が抱える3つの問題~

中国人消費者を知るには現地に行ったりクチコミを調べたり報道に触れるなど、さまざまな方法があります。本日は番外編として、マクロな視点から中国人消費者の生活する「中国」で最近人々を悩ませている深刻な問題について、代表的な三点を取り上げてみたいと思います。

 内陸から押し寄せる砂…望みの南方も余裕なく

まずひとつ目は「水不足」です。

中国は国土がとても大きいですが、水源に恵まれていません。加えて内陸部は砂漠化が進んでおり、砂漠化は内陸部だけにとどまらず北京の近くまで押し寄せてきています。このため毎年の黄砂はひどくなるばかりで、中国で遷都が真剣に議論されているのにはこうした事情があります。

歴史的に中国の北部は水不足に悩まされてきました。このままでは黄河が干上がってしまうと懸念され、比較的水が豊富な南方の水を北にひいてくるということも考えられたことがあります。

しかしその後は南方でもそれほど水源に余裕がなくなってきたこともあり、以前のように議論は進んでいないようです。今中国が最も欲しい資源は石油でもレアアースでもなく、水なのです。

参考:
如果中国要迁都 哪一个城市最合适?(出典:網易新聞) (中国語)

一人っ子にのしかかる介護負担

二つ目は「高齢化」です。

中国は人口がとても多く、高齢化のインパクトも日本とは比較になりません。上海のような都市部では特に高齢化が急速に進んでいます。2015年末時点で都市総人口の約1/3が高齢者という報道もあり、事態は深刻です。

中国の人は親孝行で両親の面倒をよくみると言われますが、一人っ子の人が多いので負担は相当なものがあります。

更に年金、保険等の制度も整っていませんし、老人ホーム等の施設の充実もまだまだこれからというところですから、高齢者のサポートは実質的には家族に負担がいきます。13億人の人口を持つ国の大部分が高齢者になってしまった場合、その面倒を誰がみるのかというのは、上の水資源と並んでとても恐ろしい問題と言えます。

参考:
2050年には日本超え!?上海市の高齢化が深刻―中国(出典:レコードチャイナ)

 政府が恐れるのは、〇〇浪人が引き起こす不満

そして最後は「就職」です。

中国政府はかつて大学進学率の向上を目指して沢山の大学を新設しました。結果として確かに大学進学率は高くなったのですが、大学生の仕事探しは以前に比べ大変に厳しくなりました。

就職活動の競争が激しくなったという現状、そして中国の経済が以前のように絶好調とは言えなくなり、大学生は以前のように条件の良い仕事がみつからなくなっています。

また大学が増えたとはいっても、大学入学への道は平たんではありません。中国の学生は子供の頃から、金銭的また精神的に親や親戚等の全面サポートを受けて、それこそ血を吐く思いで勉強をした結果大学に入学します。

結果、大学生は、「これだけ努力したのだからつまらない仕事には就きたくない」というプライドを持つようになります。家族もそうした考えを支持することが多く、大量の就職浪人を引き起こしています。

中国政府は、こうして仕事に就くことができない学生が増加し社会が不安定化することを非常に恐れています。そこで国務院では2020年までに都市部5,000万人以上の雇用を創出する等の目標を掲げ、大学生の就職サポートに全力をあげているのです。

参考:
为什么大学生找工作这么难?真相都在这里了(出典:捜狐) (中国語)
2020年までに5000万人以上の雇用を創出(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構)

まとめ

今回ご紹介した3つの問題は、短期間での解決が難しく、粘り強い継続的な取り組みが必要な問題です。日本の高齢化や就職の現場には同じような問題が発生しており、むしろ先行しているくらいですが、これだけのスケールの違いがあるゆえに、日本をお手本にするというのも難しいようです。中国でも解決を目指し試行錯誤の繰り返しとなっています。

中国人消費者が直面するこうした困難を理解することは、マーケティングにおいても有効な一手を選び取ることに役立つのではないでしょうか。ぜひ中国市場のターゲット像をイメージする際に、覚えておいていただければと思います。

 

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