中国最大のECイベントW11(双十一)の市場環境と打つべき対策(2) ~「プロモーションの分散化」が有効な二つの理由~
あと1か月半後にせまったW11。前回はその歴史や期間中の販売戦略、そしてセール前後のスケジュールをお伝えしました。
▼前編も合わせてご覧ください
【特集】中国最大のECイベントW11(双十一)の市場環境と打つべき対策(1) ~この知識がW11勝利への「神器」、基礎からおさえる中国ECでの戦い方~
後半の本編では、W11における【落とし穴】、【注意点】そしてそれらに負けない【有効なプロモーション施策】をご紹介します。
本編は、株式会社トレンドExpress代表取締役社長 濱野智成へのインタビューを中心に、関連資料の内容と合わせて再構成しています。文中に関連資料ダウンロードURL(無料)もございますので、合わせてご覧ください。
W11の落とし穴と課題
W11参入のタイミングについて理解したところで、次に具体的な戦略を立てたいところです。まずは、【すでに参入している企業】も直面する可能性のある課題について確認したいと思います。
- 返品対応やクレーム対応による収益の減少
- 値崩れによる赤字発生
- ECモール内での消耗戦
3点について、順に見ていきましょう。
まず挙げられるのが、返品対応やクレーム対応による収益減です。特に、サイズや色が違うと言った理由から、アパレル商品の返品率が高くなっています。対応策としては、返品に対する規定をサイトに明示すること、また運営代行業者とのコミュニケーションを欠かさず、カスタマーサポートをマネジメントすることも重要でしょう。
次に挙げられる課題は、「赤字の回避」です。「PR促進型」「在庫処分型」問わず、プロモーション予算を使い過ぎること、またはバーゲンしすぎて値崩れ(市場での売値が急激に下がること)を引き起こすことにより、赤字に陥るというケースがあります。
特に注意すべきは、メーカーの主体的な「値下げ」です。これによりブランド評価が「安い商品」という認識になり値崩れを引き起こし、値下げをやめて元の値段に戻した際に購入してもらえなくなる事態が起こります。W11の商戦では、売上だけでなく利益をいかに獲得するかという目線が必要です。
また3点目、ECモール内に存在する欧米系ブランドや韓国系ブランドなどの強力な競合も、参入企業の頭を悩ませる存在です。
彼らは、日本企業と比較すると多額の投資でブランディングを仕掛けています。ECモール内の限られたプロモーション枠内では、当然のことながら高額なプロモーション予算を出せる企業が有利になります。そのため、ECモール内でブランド認知を高めたり、販促キャンペーンで売上に繋げようとしても、強力な競合ブランドとの競争が激しく消耗戦に陥るケースが多々あります。
情報は質・量・タイミング!
では消耗戦を避け、認知獲得をする方法はあるのでしょうか? その答えはプロモーションの分散化にあります。
W11に向けては特に各社によるプロモーションによる情報拡散が急増します。ここで気に留めておきたいのは、人間が一度に咀嚼できる情報量は限られているという点です。消費者の立場からも、プロモーションの分散化は望ましいと言えるでしょう。
(1)でお伝えしたようにW11後もイベントは続きます。11月の一点集中ではなく、その他の目玉イベントに購買を分散していくことは販売側、購入側双方にとってバランスが良いでしょう。こうして分散化したプロモーションで認知を獲得していくことが消耗戦を回避するための一つの方策です。
こういった面からも、ライフタイムバリューを高める(商品のファンになってもらい、繰り返し購入してもらえるようになる)ことを意識し、中長期の戦略を含めてW11を捉え戦略を立てることは重要だ、と理解できるのではないでしょうか。たとえばW11は「大量のサンプリングができる場」だと考えれば、そのための費用がかさんだとしてもそれはマーケティング投資と捉えることができます。多少の赤字でも、その施策から店舗への誘導やリピート購入の増加といった今後につながれば問題ないのです。
中国越境ECで平時そしてセール期間に売上・利益を上げるために
多少の赤字を覚悟する施策もありとはいっても、売上、そしてもちろん利益は重要な指標であることに変わりはありません。具体的にはどうしたら越境ECやW11で売上・利益を上げられるのでしょうか?
ブルーオーシャンはモール外にあった!
まず、ECサイト内でプロモーションのレッドオーシャン化が激化している現状では、他社と同じ土俵に乗っている状態では利益率も頭打ちとなります。そのため、ブルーオーシャンにキャンペーンを打ち出し、新たな市場を作ることが重要になってきます。
新たな市場、それは「モール外でのブランディング」です。モール外でのブランド認知が高まれば、指名検索や指名買いを促進することができます。各企業のプロモーション施策においては直接購買やコンバージョンにつながるものが重視されがちですが、そもそも前提としてブランド認知が広がっていないと中国ではまったく商品が売れません。ブランド認知がない状態で越境ECに参入したりW11商戦に参入したとしても、プロモーションコストが浪費に終わる可能性が高いのです。
繰り返しになりますが、売上や利益の度外視はできません。モール内に誘導された消費者に購買してもらうことも重要です。そのためのモール内プロモーションも重要ですが、そこでは他社との差別化を図り「買ってもらうためのプロモーション」をいかに効率よく構築するかを考えるべきです。
越境ECや双十一での成功のカギとなる、「買ってもらうためのプロモーション」には「モール外プロモーション」は欠かせない要素となります。
10月~12月、期間ごとの施策を整理!
次に、W11のブランディングプロモーションの推進プロセスについて具体的にご紹介していきたいと思います。
まず9月から12月末のクリスマスまでを、主に三つのフェーズに分けます。
9月から10月半ばまでは主に調査分析・ブランディング戦略策定・施策の選定に充て、そこから11月に差し掛かる頃までブランディングプロモーション施策を行います。
そして12月のW12が終わった頃に、効果測定と今後の戦略をブラッシュアップします。
モール外ブランディングにおけるクチコミの活用
中国市場はウェブ上の「商品のクチコミ」の存在感を最大化させることが、売上アップに直結するフィールドです。
では、中国で影響力のあるクチコミを最大化してブランディングするには、どんな施策が有効しょうか。当社が提案する有効な施策には、主に二つのフェーズが存在します。
- ささるコンテンツの作成
- クチコミ件数の増大
前者の「ささるコンテンツ」は具体的には、自社ブランドの①強みや特徴・ストーリー、②競合ブランド、そして③市場環境(=3C)にかかわるビッグデータを収集・分析し、ターゲット層にささるウェブ記事を作成します。(ブランディングインサイトおよびバズワードの抽出)。
後者の「クチコミ件数の増大」においてはターゲット層にリーチできるメディアを特定し、コンテンツ(記事)を配信することで情報発信をし、クチコミ件数の最大化を促します。
最大化したクチコミは店舗やECモールへの誘客を可能にしますが、この施策の効果は売上アップという第一の目的達成だけにはありません。フィードバックを入手できることによる、次の施策に対する貢献度の大きさも特徴的です。ECモールで発生したクチコミ(ソーシャルビッグデータ)を再び収集・分析することでフィードバックを作成し、このフィードバックを活用しながら再度ターゲット層へリーチするコンテンツ内容、配信先媒体を検討することが可能です。
▼バズワードの抽出、メディアの選定の実例を紹介しています
【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(5)事例から見る「発掘」「抽出」「選定」
まとめ
中国におけるブランディングに成功するためには、まずはPDCAを回しノウハウを蓄積していかなければなりません。そうと理解はしていても、最初の第一歩としてどのような一歩を踏み出せばよいか、立ちすくんでいる担当者や企業様もいるのではないかと思います。
トレンドExpressでは上記で解説したようなPDCAサイクルをまわす施策「トレンドPR」を提供しています。中国人消費者の消費行動に大きな影響を与えるSNS始めとしたインターネット上の「クチコミ」を利用した施策は、最初の一歩にふさわしい施策ではないでしょうか。