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【特集】2018年は何がアツい?2017年の「買った」「買いたい」から探る(5)~ベビー用品ニーズに見える「競争心」と異なる子育て事情

2017年の「買った」「買いたい」ランキングから、2018年に売れそうなモノについて探る本特集、(4)では、新たに登場した「香り」ニーズについて確認しました。

最後となる(5)では、医薬品カテゴリ、ベビー用品カテゴリについて見ていきたいと思います。


医薬品、目薬を追う皮膚薬

医薬品カテゴリについて、「日本で買いたい」クチコミ件数推移を見ていきましょう。

医薬品「買いたい」件数推移

目薬が人気なのはみなさんご存知の通りですが、購買意欲はいまだ緩やかに増加しているようです。(3)でお伝えしたとおり、視力低下に悩みを持つ消費者が多いことも背景にあるでしょう。

目薬を追っているのが皮膚薬で、昨年5月ごろから増加傾向を見せています。次いで件数が多いのが胃腸薬ですが、件数は下降傾向となっています。皮膚薬について「日本で買いたい」ランキングで見てみると、アンナザルベ・エース、液体ムヒ、ニノキュアなどが上位に入っています。こうした上位に並んでいる商品を見ると皮膚薬とはいってもニキビ対策など、スキンケアの延長線上にあることが見て取れます。中国では治療までいかない、こうした「皮膚の悩みの改善薬」が非常に少なく、それが日本の皮膚薬の注目度を高めていることが予想されます。

また、中国人の患者さんを受け入れた経験のある日本の皮膚科クリニックによると、中国女性の肌の悩みは「乾燥」、「くすみ」、そして敏感肌の人が多いとのこと。また「毛穴」を気にする人も多くおり、これらの悩みを隠すため「カバー力」の高い、がっちりメイクを好む傾向が多いのだそうです。しかし専門家から見れば、もともと敏感肌の人がお化粧をし過ぎると、かえってくすみや赤みなどの症状が悪化してしまうことになってしまいます。

実は中国ではまだ、「皮膚に合わせたメイク手法・化粧品選び」が普及していないため、皮膚の悩みを改善できないまま、従来通りのメイクでかえって皮膚を傷付けてしまうケースが非常に多いのです。

日本ではすでに、肌への負担の少ない「ミネラル化粧品」も普及していますが、中国での知名度はまだまだ低いのが現状。皮膚の悩みを改善するお薬と同時に、こうした機能性をもった化粧品も今後ニーズが見込めるかもしれません。

中国人女性の「がっちりメイク」に影響を与えているのがファッション雑誌やサイトなのだとか。中国で活動していたフォトグラファーに話を聞くと、中国のファッション誌などでは紙面に登場するモデル写真の大部分が、「肌の質感が無くなるまで」加工するそうで、そうした肌を目指したメイクをする女性が多くなっていると言われています。文字通り「珠(宝玉)のような肌」をよしとする意識がいまだに強いせいかもしれません。

安定のベビーケア市場、知育市場には出遅れ感

ベビー・マタニティ「買いたい」件数推移

ベビー・マタニティ用品を見てみると、その他ベビー用品が増加傾向にあります。人気の日本のおむつは既に定番化している様子がうかがえます。

その他ベビー用品の内訳を見るとベビーカーが根強い人気ですが、その他にはベビーパウダー、クリームなど肌につけるものから、爪切り、スポイト薬飲み、体温計など多岐にわたります。ただし、ランク入りしている商品点数は決して多くなく、まだ発掘できていない市場が多くあることも予想できます。

中国のママさんたちに話を聞いてみると、大きな悩みは新生児のスキンケア。オムツかぶれやあせもなど、まだ皮膚の弱い新生児のスキンケアには非常に気を使います。中国製の子供用皮膚薬なども販売されていますが、早い効果を出すためステロイドを使用している皮膚薬も多く出回っており、子供の健康に敏感なママさんたちにとっては不安材料になっているとか。そうした背景から「子供の肌に塗る物」が粉ミルクや離乳食などと同じレベルで注目されているのです(夏の「子供用ムヒ」や「虫よけ」なども同様)。

また、意外なところで注目されているのが、ミキハウスの「ベビープレシューズ」(室内履き)や「ファーストシューズ」。デザイン性ももちろんながら、「子供の足に優しい」という評価がブログなどで見られています。ここにはもちろん子供の体へのケアの意味もありますが、「ほかの子供より早く」という競争社会ならではの意識があるようです。

同じ理由から、子供の知育グッズも大きな市場となっています。上海などの大都市では早期教育のスクールが軒を連ねており、日本の「しまじろう」も人気となっています。しかし現地のママさんにヒアリングしてみると、知育玩具の分野に関しては欧米メーカーに集中しており、日本企業の商品はあまり知られていない様子。欧米系のメーカーはいち早く中国の学歴社会に注目、自社商品の中国国内生産や普及などに務めていたと考えられます。

とはいえ、中国の教育熱も衰えを見せず、「子供をスタートラインで負けさせてはいけない!」というスローガンも依然としてママさんたちの教育熱を燃えあがらせています。子供の成長を早めるグッズや玩具のニーズもまだチャンスは残されていると言えるでしょう。

参考:
Mikihouse学步鞋的使用感受(出典:smzdm.com) 中国語

狙いどころは、働く女性のための「産後ケア」。

クチコミ件数が増えないマタニティ用品ですが、「日本で買った」「日本で買いたい」クチコミ件数推移を比較して見ると、圧倒的に「日本で買いたい」が多い結果となっており、関心の高さがうかがえます。

マタニティ「買った」「買いたい」件数推移

市場拡大はこれからといったところで期待も持てますが、子育て事情が日本と異なる点も多く、その点を確認したうえでニーズをとらえていく必要があります。中国のマタニティグッズにおいて最もニーズが高いのは、やはりスキンケア。「ママ&キッズ ナチュラルマーククリーム」に集中しています。これはやはり、妊婦さん&新生児両方に使える安心感が人気です。

中国の法律では、いわゆる産休は98日(約3か月)、しかしこれには出産前15日間も含まれます。また日本のような「育児休業」制度もないため、よほどの経済力を持った人以外は、出産後の社会復帰が比較的早いというのが特徴です。いわば、出産後短期間で人前に出る機会が増えるため、如何にして体型を回復させるかに腐心する女性も多いようで、産後のダイエット食や産後ヨガなどの情報もネット上に多く紹介されています。こうした産後ママケア市場は引き続き注目です。

日本と異なるのが、日本では数多く誕生しているママさん向け便利グッズにあまり注目が集まっていないこと。これには日本とは異なる社会背景があると考えられます。

現在の中国パパ、ママの多くは一人っ子同士の結婚。2人の後ろには4人の両親(子供から見たら祖父母)が控えています。さらに「子供を助けるのは親の務め」という意識が強いため、彼らのサポートを容易に得ることができます。マンパワーという面においてだけ見れば、子育てに孤軍奮闘する日本のお母さんに比べ、恵まれているのかもしれません。

日本の便利グッズの多くは「ワンオペ育児」の中から生まれたもの。それに比べて中国では子供に使うものの「安全面の不安」の方が人手不足よりも重要。そうした社会背景の違いがベビー・マタニティ市場から見えてきます。

中国の連続ドラマで『辣妈正传(Hot Mam)』という作品がありました。幼稚で頼りない夫を持った「有能イケイケ・ママ」が子育てに奮闘するというドタバタコメディ。そこにはバリバリのキャリアとして仕事をしつつ、お金持ちの恵まれた家庭の子育てを横目に見ながら、また古い考えのお姑さんたちと戦いつつ育児をこなす…。そんな現代中国ママさんたちの苦悩が垣間見え、多くのママさん視聴者の共感を得ていました。

こうした中国ママさんたちの、日本とは少し異なる、でもどこか懐かしい悩みに響く訴求が、今後の市場展開の鍵になりそうです。

まとめ

医薬品市場においては、治療薬としてではなく、悩みを改善させる効果のある薬が注目されています。こうした、「体のちょっとした不調・悩み」に合わせた改善商材には、まだまだチャンスが残されている様子です。

またほぼ固定化した感のあるベビー・マタニティ市場。妊婦・乳幼児向けスキンケアへの人気は依然として高いことに加え、まだ日本の企業が攻め切れていない市場が存在しています。特に狙いはママさんたち。中国のママさんたちは子供の健康、教育、そして自身のケアにも余念がありません。こうしたママさんニーズをとらえていくことが今後より重要になってくるでしょう。

 

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