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【越境EC】中国EC商戦の戦い方④ 発信力と販売力。新たな道を示すソーシャルバイヤーたち

消費者の信頼によって成長している中国の「ソーシャルバイヤー」たち。同時に中国で拡大を続けるKOLプロモーション。現在、この両者と既存の越境ECチャネルが組み合わさることで、より多角的な消費者アプローチが可能になっています。今回はそんなソーシャルバイヤーとKOLについて触れてみたいと思います。

 

2017年7月13日、中国互聯網協会微商工作組(中国インターネット協会ソーシャルバイヤー事業チーム)では『2017中国社交電商和微商行業発展報告(中国SNS ECおよびソーシャルバイヤー業界発展報告)』を公開、その報告書の中で2016年のソーシャルバイヤー市場を3607.3億元と試算しており、さらには2017年には89.5%増の6835.8億元に達すると予想しています。

ソーシャルバイヤー市場の拡大と変化

同報告書の最新版はまだ発表されていないため、2017年の正式な結果や2018年の予測値は不明ですが、予想通り7000億元前後の規模となるとの予想。日本円に換算すれば約12兆円規模の市場となります。

こうしたソーシャルバイヤービジネスの拡大によって、非常に多くの人(海外在住者など)がこのビジネスに参入してきました。しかし、一部の専門家からは、「今後は少しずつ市場淘汰が始まるのでは」との見方もされているようです。

つまり単純に人気商品を売るだけのバイヤーは徐々に淘汰され、より新しい、独自性のある商品が発掘できたり、特徴的な情報発信を行ったり、さらにバイヤー自身をブランディングし、より高いレベルの信頼を勝ち得ていく必要があると見られているのです。

ソーシャルバイヤーがKOLに? 

そうした流れの中で徐々に進んでいるのが、ソーシャルバイヤーのKOL化です。

「KOL(インフルエンサー)」の起用は中国消費者向けのプロモーション施策として、日本でも注目されています。中国のファッションモデルや芸能人などの発信力のある存在を経由して、商品の魅力を消費者へ伝えるもので、もともとは有名人の公式SNS(WeiboWeChatなど)が主流でしたが、近年はライブ動画による発信となっており、ますます盛り上がりを見せています。

この手法、日本では「ステマ」と呼ばれ、ネガティブなイメージが先行していますが、中国では事情が若干異なります。中国トレンドExpressでも繰り返し述べていますが、中国では企業の広告などへの不信感があり、「信頼できる人の実際の使用感」すなわちクチコミが重視されていることです。

KOLたちは単純に宣伝しているのではなく、実際に使用した感想を伝えたり、また、特に動画配信などで実際に使用シーンなどを見せることで消費者も安心し、その商品の購入へと動いていくのです。

また、すでに数百万規模のフォロワーを持つKOL(芸能人含む)たちも、自らの影響力を理解していることから、自分の目で見て信頼できない商品は発信したがらない傾向があります。

そうした意味では、いわゆる「ステマ」とは異なる信頼度の高いプロモーション手法となっていると言え、さらにこうしたKOLが自身で商品の販売を行うことで、発信力と販売力を有した販売チャネルへと変容しています。

さて、前回述べたように現在のソーシャルバイヤーたちは、本物の商品を正しく紹介し、かつ素早い発送などで消費者の信頼を得ようと努力しています。その信頼を得る方法のひとつとして、有名KOL同様、ライブ動画の配信などによって自身が販売する商品の情報を発信。動画内で実際に使って見せることで、使い方を伝えるだけでなく、商品およびバイヤーへの信頼感を高めているのです。

やがてそうした信頼度の高いソーシャルバイヤーたちの動画やSNSは、そのファンの口コミによってフォロワーが増え、KOL化していくことがあるのです。

こうしたソーシャルバイヤーKOLは、フォロワー数こそ数万人程度の、いわゆる「マイクロインフルエンサー」ですが、そもそも商品の販売において信頼実績を得ているため、ロイヤリティの高い消費者に向けて発信、販売が可能。そのリピート率も60%を超えているともいわれるようになっています。

日本企業も新たな戦略的思考を

ソーシャルバイヤーの持つ発信力と、その信頼に基づいた消費者とのつながり。これらは中国市場へ商品を販売しようとする日本企業にとってはプラスの効果が期待できます。

旗艦店を開設することによって、中国市場への足掛かりを作ることはできます。また旗艦店を出店しているECプラットホームのサイト内PRによって、プラットホーム内での認知を高めることはできます。そもそも旗艦店を出店することをブランディングととらえて行う企業もあります。

しかし、現在多くの企業が悩んでいるのが、いかにしてサイト外にいる消費者に認知してもらい、購入に結び付けていくかです。

こうした課題も、日本企業がソーシャルバイヤーを戦略的に活用していくことで改善させていくことができます。発信力のあるソーシャルバイヤーによる情報発信を行い、それによって販売を行いつつ、徐々に知名度を高めながら旗艦店への流入を行っていくといった手法も考えられます。

ソーシャルバイヤーの成長が、日本企業にとって新たな戦略策定をもたらしていきそうです。