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【中国消費】中国市場の成功は女性が握る。中国女性消費をさぐる

景気減速がささやかれている中国ですが、その中でも「もっと伸びる」と言われている領域があります。それが「女性消費」。すでに10年ほど前から中国国内では「她経済(ウーマン・エコノミック)」という言葉が現れ始め、注目を集めています。

今回は、これからもさらに熱く広がる中国女性消費の基礎を見ていきましょう。


女性消費が7割を占めるEC業界

中国の女性消費、どのくらいの規模かと言えば、2018年初の時点ですでに2兆5000億元、そして今年2019年には4兆5000億元にまで成長すると言われています。

TaobaoやT-Mallを運営するアリババ、その研究機関である阿里研究所が発表した『2018新品消費趨勢報告』によると、アリババグループが運営するECサイトの売上のうち、70%が女性によるものとなっており、そのビジネスが「女性に支えられている」ことが見て取れます。

また、2018年に約20万のブランドが、5000万種類もの新商品を提供していますが、そうした新商品を購入する消費者の男女比率は男性3に対して女性7。ここでもやはり圧倒的多数が女性によって占められており、新商品も自然に女性向け商品が多くなっているようです。

さらにその消費対象ですが、もちろん化粧品やバッグ、さらにはアパレルファッション、インナー(男性物より単価が高い)といった、女性ならではの商品以外に、医療や美容、健康などのサービス、また音楽やアートと言った新たな消費も増加しており、更なる広がりを見せているのです。

背景にあるのが女性の社会進出

こうした女性消費の拡大、その原因となっているのが女性の社会進出です。

といっても、「過去に比べて女性の社会進出が増えた」というわけではありません。中国では女性の社会進出意識が日本よりも強い、比較的「当たり前のこと」となっているのです。

中国という国はイデオロギー的に「旧思想によって虐げられていた人たちを救済する」という理念があることから、建国以来、女性の権利向上を行ってきていました。さらに国の指導者も「女人能頂半辺天(女性だって世の中の半分を支えられる)」との言葉を発し、女性の国家建設参加を促していた過去があります。

 

筆者も90年代終わりごろに上海に住み始めた際、女性のバスドライバーやタクシードライバーを普通に見かけ驚いたこともありますが、今では企業でも女性の高級幹部も普通に見かけるようになっています。

そして少なくないのが「女性起業家」。

その代表的な人物が中国調味料業界の伝説ともなっている「老干媽」の創始者・陶華碧女史でしょう。

彼女は早くに夫を亡くし、一人で子供を育ててきましたが、その生活のために小さな麺食堂を経営していました。しかし、普通の麺ではお客さんは来てくれません。そこで彼女は自家製の「食べるラー油」を料理と一緒に出すことにしました。

結果、そのラー油が評判を呼び、多くの人がお店を訪れました。中には「ラー油切れ」と聞いたとたん、店を出ていく人までいたとか。

そこで彼女は1996年に村役場の一部を借り、40人の村人を雇って起業。やがて中国を代表する民営企業となり、2017年のデータでは日平均200万瓶、年間で45億元を売り上げる超巨大企業へと成長しました。

 

また現在、新たな中国クチコミツールとして注目されていた「小紅書(RED)」の2人いる創始者の1人・瞿芳女史も注目女性経営者です。

このように、女性の社会進出が進んでいるために経済的に自立した女性が多く、それに伴い消費能力が高くなる、という結果になっているのです。

ゲーム業界、旅行業界にも「女性消費」の波

中国音数協会(中国ミュージック・デジタル協会)の調べによると、2018年ゲーム業界における女性ユーザー数は2.9億人(実名登録しているユーザーのみ)、そしてそのゲーム消費金額は490億元に達しているとのこと。

2018年のユーザー数が6.3億人なので、半数とまでは行かないまでも、かなりの比率を占めていることがわかります。

人気となったのは『王者栄耀』、そして『陰陽師』といったゲーム。また日本の『刀剣乱舞』もイケメンキャラがハマり、女性ユーザーが増えているようです。

 

さらに旅行業界でも女性性消費の波が。

2018年にニールセンが行った調査では、中国の女性が年間で「平均4万元を海外旅行に費やす」という結果が現れています。

以前紹介した春節の訪日データでも、訪日観光客は女性の方が多いという数値が見えており、特に20代30代女性が主力となっていることがわかりました。

今後、インバウンドにおいても「女性消費」に主力を置く必要がありそうです。

 

ちなみに、前述のアリババのレポートでは、「女性の方がいわゆるKOLの発信する情報の影響を受けやすい」といった内容も少しだけ含まれていることから、KOLを活用した女性消費者へのアプローチは引き続き有効とみることができます。

しかし、ビジネスの現場で戦い、さらに高みを登っていく中国の女性は非常に「しっかり者」。単純に「KOLさえ使えば…」では攻略しきれない部分も想定されます。

こうした中国の巨大消費層である中国女性のニーズを探るべく、中国トレンドExpressでは2月、3月の期間『中国女性消費』をターゲットに情報を追いかけていきます。