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【ミニコラム】 東京五輪延期を中国はどう伝えたか そしてSNS上の反応は?

懸案だった今年夏の東京五輪が1年程度延期され、「2021年夏までに開催」との報道が日本国内だけでなく、世界中で流れた。

原因となったのはもちろん新型コロナウイルスの蔓延であるが、最初にそのウイルスとの戦いを繰り広げ、国内の報道を見る限り徐々に回復モードに入りつつある中国ではどのようにとらえたのか。

中国での報道、SNS上のコメントなどを見ながら考えてみよう。


大手メディアも一斉に報道。SNSの反応は?

東京オリンピック延期のニュース、中国でも大手メディアが一斉に報じている。ただその内容は、延期の判断に対してなにか論評を加えるものではなく、事実を伝えるにとどまっている。

Weiboの東京オリンピック公式アカウントにおいては、3月24日21:21にこの情報を公開、中国での公式発表としている。

通常、このアカウントの投稿には300程度のコメントがつけられるが、この投稿に関しては3月27日時点で3600件ものコメントが並べられている。

 

ここには「来年会おう!がんばれ!」、「来年会おうね。ほんとに東京に行きたい!」といった声や「この決定を支持する」といった決定に対するポジティブな評価、「世界から早く新型コロナウイルスがなくなればいい」といった早期終息を願う声などが書き込まれている。

 

またWeiboで各メディアの同内容の記事にもポジティブな書き込みが並んでおり、単純な東京オリンピックファンだけでなく、新型コロナウイルスの状況に関心を向けている多くの中国消費者がこの決定を理解し、支持していることが見て取れる。

ここにはやはり2020年に入ってからの日本への好感度が上がっていることが見て取れる。

ひと昔前であれば、日本の災難には良識ある書き込みに交じって、少なからぬ「不幸を喜ぶ」言葉が見えたものだが、それがほとんど見当たらない。

 

中国国内での蔓延時における日本の支援、さらには「箱に書かれた漢詩」が中国でも広く紹介され、文化的なつながりを感じながら支援を受け入れていたことが、こうした評価に一定の影響を与えているといえるだろう。

 

こうした中国消費者の動きが、東京オリンピックだけではなく訪日観光にも前向きな影響を与えてくれることを期待したい。

ピークは過ぎたが、中国にとっても他人事ではない海外の情勢

とはいうものの、このオリンピックの延期は中国にとって対岸の火というわけではない。少なからぬ中国企業への影響が予想されている。

 

政府系のメディアである「環球網」では、何かしらの影響を受けそうな企業を上げつつ、分析している。

 

例えばスポーツ用品ブランドの「安踏」である。

同社は2019年10月に「オリンピックの公式サプライヤー」としての契約を交わしたことを発表しており、国際オリンピック協会の委員メンバーや職員のスポーツウェアやスポーツで使われる器具の一部などを供給することになっており、東京オリンピックもその契約期間内なのである。

 

同社のCEOはメディアの取材に対してすでに生産体制が回復していると話すが、その納入先が動かなければ、彼らの利益も動きようがない。

同社も2020年は一定レベルの収益計画の見直しが求められるだろう。

 

最も大きな影響を受けるのは旅行業界である。

なかでも中国における東京オリンピックチケット公式販売会社となっている「凱撒旅游」は、大きな影響を受けることが考えられる。

 

現在、東京オリンピックのチケットの払い戻し、扱いなどの正式決定がないために、同社のホームページでは公式な発表はなされていない。

これまでの販売量や今後の同社の対応については未定としか言えなさそうだが、大きな影響、対応が求められることは間違いない。

その動静も継続してみていきたい。

 

中国は回復傾向に入ったとはいえ、海外の病状が中国経済に暗い影を落としている。日本におけるイベント自粛によって、こうしたイベント会場で販売されるグッズを生産している中国の中小製造業が大きな影響を受けているという報道もあり、またアパレル縫製工場でもイタリアからテキスタイル供給が途絶えたために休業するといった話も耳にする。

 

今回の新型コロナウイルスは感染拡大の防止という点で、各国ともに自国優先、往来の禁止といった厳しい措置を取らざるを得なくなっている。

しかしどの反面、経済的な深いつながりを意識させる。それは世界経済が決してどこかの区の一強という状態ではなく、複雑に絡まりあって運営されているということを、リーマンショック以来、人々に深く意識させる結果になったのではないか。

 

願わくはその経験が社会をよくする方向へと向かう原動力になってもらいたいものである。