中国トレンドExpress

【column】中国のマーケティングセオリーのこれからを考える

コロナ禍から回復を見せている中国市場は、世界からも注目されている。

もともとプレステージから一般大衆ブランドまで、欧米、日本、韓国、そして急成長を見せる中国のブランドがひしめき、まさに消費ブランドの万国博覧会の様相を呈している。

そこで熱を帯びてくるのはマーケティング、プロモーション活動だ。

どの国のどのブランドも、より強い印象を消費者に刻み付け、そして購買へとつなげようとしている。

こうしたプロモーション戦争を眺める中で、ふとした疑問が頭をよぎることがある。そんな少し客観的な視点から中国プロモーションの課題を書き出してみた。


KOL、ライブ。中国マーケティングの今

本稿を執筆しているのは2021年5月28日。まさに中国2大商戦の一つ、「618」が開始され、Taobao・T-Mallのアリババ勢を始め、JD.com、PDD(拼多多)のECプラットフォーマー、家電大手のSuning(蘇寧)のといった小売り、そしてさらに抖音、快手の2大ショート動画APPが自営のECを展開し参入。

まさに群雄割拠となっている。

 

そのオンライン小売りの競争とともに過熱するのがブランドによるプロモーション活動。

大型商戦期はどうしても消費者の財布の紐が緩む時期であり、ブランドにとっては書き入れ時だ。

 

商戦期にはSNS上でのプロモーションや一般人投稿に加え、近年はKOLによるライブコマースが最も盛り上がり、売り上げ拡大を目指す。

今まさに、618では人気KOLによるライブコマースが、Taobao Liveや抖音など、膨大なトラフィックを有するライブプラットフォームから発信され、そこからECプラットフォームの旗艦店へと流入しているのである。

 

これが中国商戦期における通常のプロモーションである。

発信用プラットホーム(SNSやLive)から発信し、販売用のプラットホーム(EC)に誘導する。

それがセオリーなのである。

 

しかし、それで本当に中国市場で“継続的な事業発展”がなせるだろうか、と筆者は最近考えるようになっている。

ブランドのため込みがしずらい中国マーケティング

では、中国マーケティング活動の現状を、特定のブランドではなくあくまでもイメージ図であるが、クチコミの醸成から見るブランドの浸透度という視点で見てみる。

 

理想的なのは下のようなグラフであると考える。

【イメージ】理想的なクチコミ推移

618やW11のような大型商戦を活用し、話題を作り出し認知を拡大。もちろん売り上げもあげるとともに、認知度・浸透度を「ワンランク上げる」。

そうすれば次回の商戦は、より大きな売上を期待することができ、さらにそれをもってもう一段高いレベルに自社のブランドを高めることができるのである。

 

これがサイクルしていけば、認知度・浸透度が高まっている土壌の上で戦うことができ、1回の商戦にかける労力が減るばかりか、長期に渡る売り上げが期待できる。

 

しかし、実際に多いパターンは下の図のような形式である。

【イメージ】よくあるクチコミ推移

これを見ると、商戦期には確かにプロモーションの結果としてクチコミ件数は上がっている。

しかしそれ以外は急落して、商戦前の状況に戻ってしまっており、結果的には中国の消費者に対してブランドは浸透していかない。

 

そのため、商戦の都度、プラットホームで大規模なキャンペーンを展開し続けなくてはならず、そこでの収益頼り、プロモーション投資と収益の追いかけっこ。際限ないマーケティングコスト投下による体力勝負に陥りかねないのである。

「連れてくる」ことから「居着かせる」マーケティングへ

こうした理想と現実の乖離を引き起こしているのはなぜだろうか?

それは、ブランド側の「受け皿」の不足があるのではないか、とも考えられる。

 

プロモーションは、消費者を大きなブランドの名を冠した筒の中に放り込むようなものである。

放り込まれた消費者はそのブランドを体験しながらも、時間が経つにつれ熱意が薄れてくる。

やがて筒の下に達し、筒の底へと落ちて行く、すなわちブランドから離れて行ってしまうのである。

しかし、その筒の底に、居心地のいい受け皿を用意して置いたらどうだろう。

そこでは消費者に対して常に至れり尽くせり、彼らを喜ばせる情報やサービスが提供される。

 

やがて消費者はその筒の底に“居着く”要になり、ブランドと長いお付き合いを始めていく…。

すなわち、その消費者はブランドのファンであり、その受け皿こそが「ファングループ」というべき存在なのである。

これまでの中国マーケティング、プロモーションは「どれだけ多くの消費者を筒の中に投げ込むか・連れてくるか」が重要視された。

KOL、ライブコマースがまさにそれである。

 

しかし、今、その手法が普遍化した中、消費者は数多くの筒に同時に呼び込まれている状態。であるのであれば「居心地の良い筒」に収まりたいと願うのではないのだろうか。

そうした消費者の心理に、今中国のローカルブランドでは「ファンマーケティング」という概念が広がっている。

 

「消費者を多く連れてくる」から「消費者をより居着かせる」時代へと変化しているのである。

どこまでその流れをしり、順応できるかが、競争の激しい中国市場での生き残りを決めるといえるだろう。

 

中国ファンマーケティング施策に関しての資料はこちらまで。