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中国政府による動画配信の停止命令を受けた3サイトはこれ! 指摘内容と現状は?

6月22日、中国版Twitter「新浪微博」、動画共有サイトの「AcFun」そして香港に拠点を持つ「鳳凰新媒体」が中国で運営する「鳳凰網」の3つのウェブサイトに対し、中国国家新聞出版広電総局※が動画コンテンツのサービス停止の措置をとり、全面的な改善をはかることにより、ネットユーザーのための健全なネット空間の造成を図ることを発表しました。

本件は中国そして日本でニュースとなりました。本日はこの出来事の流れをまとめ、合わせて指摘の根拠となった関連法規を確認してみたいと思います。

※広=放送、電=電視はテレビの意味で、メディア総局にあたる部門

動画公開を停止させられた3つのウェブサイト

まずは、今回名指しで通知を公表された3つのウェブサイトについて簡単に解説します。

「新浪微博」は中国版Twitterとも称される、文章と写真、動画を公開できるSNSプラットフォームです。現在ユーザー数は増加傾向にあり、5月16日に新浪微博の発表した2017年第一四半期の財政報告によれば、MAU(月間アクティブ利用者数)は3.4億人に達しています(昨年同期比30%増加)。Twitterの全世界のユーザー数が3.28億人ですので、新浪微博はTwitterを上回ったということになります。

「AcFun」は中国で初めて、日本の「ニコニコ動画」のような、公開されている動画の画面上へのコメントの投稿という形式を採用した動画共有サービスです。同様のサービスを提供する「bilibili」と並べて「Aサイト」「Bサイト」と呼ばれています。画面上に流れるコメントは「弾幕」と呼ばれ、実際のサイトを確認すると「アニメ」「音楽」「ゲーム」「娯楽」「ドラマ」「ダンス」「体育」などのカテゴリがあることがわかります。

「鳳凰網」は「中華ニュース/グローバル視点/開放された包括的な視点/さらなる進歩」を理念に掲げる「鳳凰新媒体」の運営するプラットフォームの一つです。鳳凰新媒体はほかに、「モバイル版鳳凰網」「鳳凰チャンネル」を筆頭に、複数のメディアプラットフォームを運営しています。前身は96年に放送を開始したフェニックステレビで、2008年に香港証券取引所に上場したのち、2011年に「鳳凰新媒体」に再編成しニューヨーク証券取引所に上場しています。

動画配信停止のいきさつ ~指摘事項は二点、「許可証」とは?

今回、国家新聞出版広電総局が3つのサイトに対して動画コンテンツのサービス停止の通知でその「理由」として指摘していた点はどこにあるのでしょうか?

発表によると理由は二つで、一つ目は「情報インターネット伝播視聴プログラム許可証」の取得がなされていなかったから、そして二つ目は大量の動画の配信に「国家の規定に合致しない時事ニュース」と、「社会のマイナス面をとりあげる社会討論」が含まれていたからだといいます。

「情報インターネット伝播視聴プログラム許可証」は「インターネット視聴プログラムサービス管理規定」第7条に規定される、中華人民共和国内で公衆にインターネット視聴プログラム(動画コンテンツ)を提供する場合に必要な許可証です。

同じく管理規定の第17条によれば、「許可証」のない組織による個人への視聴プログラム(動画コンテンツ)アップロードのサービス提供は禁止されています。またインターネット視聴プログラム(動画コンテンツ)のサービスを提供している組織は、個人に時事政治にかかわるニュースをアップロードすることを許可してはならないとされています。

微博は時間制限と許可証の保持・提出をユーザーに呼びかける

新浪微博はこの通知を受け、翌週の28日に微博上で「SNSプラットフォームとしてユーザーと投稿内容の開放性に対する認識が不十分であったため、一部ユーザーによる不適切な内容の動画のアップロードが起きた。これにより社会へ悪影響を与えたため、対策をとる」ことを発表しました。

対応策として、ユーザーに以下三点を要求しました。

  • 微博のアカウントを用いて動画を公開する場合で、「情報インターネット伝播視聴プログラム許可証」を保有するユーザーは、許可証の各要求事項に即した業務展開をすること
  • 微博のアカウントを用いて映画、ドラマを公開する場合は、「映画公開許可証」または「ドラマ公開許可証」を保有していること。許可証のない場合やインターネット視聴プログラム管理の関連規定に適合しない内容のネットドラマ、ネット映画、ニュースなどのコンテンツについては、公開停止の措置をとること
  • 「15分以上の長編動画のアップロード」の公開機能と自動解析や自動放映の機能を停止すること

この声明では、新浪微博自身が「許可証」を取得するかどうかには言及されておらず、「個人に時事政治にかかわるニュースをアップロードすることを許可してはならない」という管理規定の第17条の一部分への対応を表明するにとどまっています。

許可証は現在申請中? 動画コンテンツサービスは継続

鳳凰新媒体の対応については、同じく翌週の26日に投資関連サイトの「和訊網」が報じています。この内容によれば、鳳凰新媒体は「コンテンツ内容の管理の強化をし続け、著作権の保護と規定の厳守に努め、動画コンテンツの業務の継続に努める」ことを表明しています。

編集部が7月5日夜確認したところでは、まだ「許可証」の番号は掲載されていませんが、動画コンテンツの掲載は継続されているようです。AcFunも同じ状況でした。

他の動画共有サイトはどうなっているのでしょうか?「Bネット」と呼ばれるBilibiliのサイトを見てみたところ、許可証は取得済であることがわかります。また虎牙ライブ、Inkeには許可証の番号が明示されていたとする記事もありましたが、今回確認したところBilibili以外では確認できませんでした。

また同記事では、当時「許可証」を得ていたサイトは、サイトの運営会社ではなく別の許可証を持つメディアとの協力の形で許可証を得ていたと伝えられています。

まとめ

ニューズウィーク日本版が報じたところによると、フェニックステレビの番組でネット上に公開されていたバックナンバーのうち、時事ネタを扱ったデータの公開が停止されたそうです。

ここまで見てきた情報からは、指摘を受けた3つのウェブサイトでは動画配信サービス自体は継続することができている一方で、ウェブ上にアップロードされるコンテンツは内容によっては公開ができなくなっている、というのが現状のようです。

またどのメディアも、通知を受領したあとの声明等では許可証を取得するかどうかには言及していませんでしたが、「インターネット視聴プログラム管理規定」によればサイトが作成したものであるかどうかにかかわらず、動画の公開には許可証が必要となっているとわかりました。

動画といえば中国向けマーケティングでもなしには考えられないコンテンツとなっています。トレンドExpressでは引き続き中国の動画業界にかかわるニュースの正確な理解に努めていきたいと思います。

 

参考:
国家新聞出版広電総局「新浪微博」「ACFUN」などのウェブサイトへ動画コンテンツサービスの停止を要求(中華人民共和国国家新聞出版広電総局) 中国語
インターネット動画コンテンツサービス管理規定(中華人民共和国国家新聞出版広電総局) 中国語
PHOENIX NEW MEDIA(2017年5月IR資料) 英語
微博が発表:15分以上の長時間の動画のアップロード機能を終了(出典:環球網国内ニュース) 中国語
鳳凰衛視:鳳凰新媒体が広電総局により動画サービスの停止措置を受ける(出典:和訊網) 中国語
調査:ライブ動画業界の新規定の発効初日、多数のプラットフォームが許可証のないまま運営を継続(出典:sootoo) 中国語
中国No.1トーク番組もやられた! 習近平「検閲」最新事情(出典:ニューズウィーク日本版)