中国・都市解説(5)江蘇省(南京市)~いにしえの首都 江蘇人は日本人のパートナーに最適?~
「東洋のヴェネツィア」とも讃えられる風光明媚な蘇州市を擁する江蘇省は中国最大の商業都市・上海に隣接しています。蘇州にも工業特区が2つあり、蘇州市内だけでも1,000社以上、周辺部を含めると2,000社以上の日系企業が進出しています。
上海がいろいろな国の企業が参入する国際都市であるのに対し、蘇州は進出企業の1/3を日本企業が占める親日色の強い都市です。経済成長の著しい歴史と文化のあふれた江蘇省の魅力をご紹介しましょう。
「4大かまど」も脱出、名門校有する古都南京
江蘇省の省都・南京(なんきん)は、英語表記ではNanjing(ナンジン)、長江沿いの内陸部に位置します。以前は重慶・武漢・南昌と並んでその夏季の気温の高さから中国の4大かまどと呼ばれたこともありましたが、最近は環境対策が進んで2017年の中国国内暑さランキングでは8位に後退しています。
南京はさまざまな王朝の都としても栄え、貴重な文化遺産の多い歴史の街でもあります。最初に南京が首都になったのは今から約2,800年前春秋時代の楚の国の時で、当時の呼び名が金陵(きんりょう)だったので今もそう呼ばれることがあります。
明の時代に首都が北京に移り、北の都に対し南京と呼ばれるようになりました。南京の略称は「寧」ですがこれはその後の清時代の名称「江寧」に由来しています。「江」「蘇」省は江寧と蘇州にちなんだ命名です。また、次節で触れますが蘇州は江蘇省随一のGDPを誇ります。
南京市は今の中国にとっても重要な都市で、副省級城市に指定されています。1902年に創立された南京大学は国家教育部直属の重点大学で、清華大学や北京大学と並び中国では知らない人はいない名門校です。
※副省級城市…経済、財政、法制の面で省と同程度の自主権が認められている15の都市。南京市のほか、広州、杭州、武漢、成都、西安、済南、瀋陽、長春、ハルビン、アモイ、深圳、大連、青島、寧波がある。
国内2位の経済規模、サービス業の経済規模が第二次産業を超える
江蘇省の2016年のGDP総額を、全国の省別ランキングで確認してみます。
2016年全国31省GDP総額別ランキング
順位 | 省 | 2016年GDP総額 |
---|---|---|
1 | 広東省 | 7兆9512.05億元 |
2 | 江蘇省 | 7兆6086.17億元 |
3 | 山東省 | 6兆7008.19億元 |
4 | 浙江省 | 4兆6484.98億元 |
5 | 河南省 | 4兆160.01億元 |
江蘇省は約7.6兆元で、広東省に次いで全国2位となっています。また2017年上半期省内の都市別GDP総量では、蘇州が8,290元で1位、南京が5,488元で2位となっています。
具体的な数字をJETOROのレポートから拾ってみます。2016年のGDP約7.6兆元内訳は、第一次産業4078億5000万元、第二次産業が約3兆3855億元、第三次産業が約3兆8152億元です。
江蘇省全体では、原炭・原油・天然ガスの生産が盛んで、テレビやエアコンなどの生活家電の工場もたくさんあり、第二次産業が省の経済を牽引してきた歴史がありますが、最近ではハイテク産業やサービス業のGDPに占める割合が増加しています。特に蘇州では「2.5次元」と呼ばれるサービスと情報通信技術が融合した産業が発展してきているそうです。
上述のJETROレポートではGDPの構成比でも第三次産業の比率は50%を超え、従業員数も産業別で唯一増加傾向にあり、産業構造がサービス業にシフトしてきていることがわかります。これらの数字からも、蘇州の人々が都市型の生活に転換しつつあることがうかがえます。
まるで日本人? 江蘇人の気質は「繊細でまじめ」
さて最後に江蘇省で生活する人々に焦点を当ててみます。人口は2017年のデータによると7866.09万人で、中国では5番目の規模です。
「江蘇省の人の気質」にはどんな特徴があるのでしょうか。中国のQ&Aサイトによると、江蘇省の人は性格が穏やかで、文化や教育を重視し、理性的、決まりを良く守る傾向にあるそうです。いわゆる「真面目」なタイプと形容することができそうです。また、思慮深く将来設計をしっかりし、リスクを避ける反面、冒険心に欠けるというイメージでとらえられているようです。
話し方では婉曲表現を好み、ずけずけ物を言われると容易に傷ついてしまいます。些細なことにまで注意が行き届く反面それらを内に抱える傾向があるようで、うつ病になる人の割合は上海に次いで中国で2番目に高いそうです。こういった特徴にはどこか日本人と通じるところがあるようにも感じられます。
以上のような江蘇人の気質を日本人と似たような性格ととらえるとすれば、同省は中国の中でも日本人には特に暮らしやすい場所と言えそうです。経済成長も著しくサービス業への意識も高いことが予想される江蘇省では、日本式の「おもてなし」精神を生かしたビジネスが根付きやすい好立地なのではないでしょうか。
参考:
2017江苏各市人口数量排行榜,历年江苏人口数量排行榜(排行榜) 中国語
2017上半年江苏省主要城市经济实力排行榜:苏州市8290亿元独居一档(排行榜) 中国語
2016年全国31省市GDP总量及增速排行榜(中商情報網) 中国語
江苏人性格特点分析?(Zhihu) 中国語
2016年最新全国31省市人口数量排行榜:广东1.08亿人(中商情報網) 中国語
第3回:蘇州は観光都市から工業都市へ(出典:日経テクノロジーonline)
中国の暑い都市ランキング、武漢と南京が「4大かまど」から脱却、新たにランクインしたのは?―中国紙(出典:レコードチャイナ)
江蘇省概況 2017年7月(JETRO)
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