【セミナーレポート】「山下智博」が刺さる!中国人ウケするクリエイティブ(1)中国動画業界はコンテンツ主導
中国トレンドExpressにて、月に一度開催している中国向けマーケティングセミナー。
今月10月は「中国人に刺さるクリエイティブコンテンツの作り方~中国で大人気のインフルエンサー山下君を生み出した名プロデューサーが登壇~」と題して《office339》より代表アートプロデューサーの鳥本健太氏にご登壇いただきました。
中国人消費者の心の中(インサイト)を発掘したうえで刺さるコンテンツを準備することは、訪日中国人向けインバウンドマーケティングや越境EC等を利用した中国国内向けアウトバウンドマーケティングを成功させる中核となります。
同セミナーでは以下の二つについて見識を深め、中国向けマーケティング、特に動画マーケティングについて知見を深めました。
- 中国人と日本人のクリエイティブコンテンツに対する感度の「差」とは何なのか。
- どういった施策・コンテンツが中国人消費者に「刺さる」のか。
第1回目の今回はoffice339のご紹介ならびに「中国の動画事情」について概観を見ていきます。
office339とは
まずは鳥本氏がCEOをつとめるoffice339について簡単にご紹介します。
2004年に上海へ渡った鳥本氏は、現代アートのキュレーション等のアート活動を、上海を拠点としてアジア各地で行ってらっしゃいました。その中で2006年に設立した会社がoffice339です。
もともとはアートプロジェクトの企画・運営や、広告・プロモーション活動を主としていましたが、インフルエンサー・山下氏の登場を受け、彼ら日本人KOL(インターネット上で、動画配信などを通してネットユーザーに支持され、インフルエンサーとして活躍する人たちのこと。キー・オピニオン・リーダー)のマネジメントや、動画制作なども手掛けるようになり、現在の業務内容は多岐にわたっています。
百花繚乱の中国「分散型メディア」には数多のプラットフォーム
ここ数年、日本でも「ユーチューバー」と呼ばれる動画配信者たちの活躍や、有名人のソーシャルネットワークサービスでの発言が取り沙汰されるようになりました。しかしその影響力はマスメディアに比較して限定的との印象を持っている方も多いでしょう。
そんな日本の状況と対照的に、中国では、ネットは既存のメディア以上に影響力を持つことがあるというのは既知の事実となっています。
特に、中国では、3年ほど前から「分散型メディア」と呼ばれるものが主流となっています。分散型メディアとはコンテンツがプラットフォームに紐づけられておらず、同一のコンテンツを複数のプラットフォームで公開、配信する形態を指します。
中国のSNSプラットフォームに関して、日本人の印象としては「中国のSNSは、ツイッターの代わりに微博、LINEの代わりに微信」と思われがちですが、それ以上にいくつもの情報発信プラットフォーム、しかもすべて中国産のものがあります。
コンテンツ主導、頭角を現す「紳士の大体1分間」
日本では、あるキー局が制作したドラマやバラエティ番組を、系列ではない他局が放送するということはまずありえません。
しかし、中国のネット社会では、コンテンツが主役です。
コンテンツが放映に値するとものであれば、様々なプラットフォームで公開、配信され、SNS上で拡散されていくのです。テレビでいえば複数のチャンネルで同じ番組が放映されているという状況です。配信のためのプラットフォームに依らず、自身が制作したコンテンツのクオリティで勝負ができる環境にあると言えます。
office339が制作するインターネット動画番組『绅士大概一分钟』(紳士の大体1分間)は、日本人KOLが現代日本の情報を中国人視聴者向けにコミカルに伝えるバラエティです。総再生回数は実に10億回を超える人気番組となっています。
先ほどお伝えしたように、中国には日本でいうYouTube、LINEだけでなく、複数のプラットフォームが地位を確立しています。この番組は動画プラットフォームでは「土豆」(トゥドウ)、「優酷」(YOUKU)をはじめとした15個ものプラットフォームで配信されています。もちろん、新浪微博、微信(WeChat)といったSNSでも拡散されています。
▲『绅士大概一分钟』(紳士の大体1分間)タイトルロゴと出演者イメージ
人気「動画」コンテンツではタイアップも
先に述べたKOLと呼ばれるインフルエンサーたちが、自身の持つSNSアカウントで商品を宣伝したり、ライブコマース(インターネット動画の生配信中に視聴者が質問したり、購入したりすることが可能な、Eコマースの新形態)でモノを売るといったことはすでに中国国内では常態化しています。
特に動画での情報発信は情報量も多く人気のある分野となっています。
中国向けに何か商品を売りたい、何かを発信したい、という場合には、インターネットでの情報拡散、特に動画が有効であるということは想像に難くないでしょう。
こういった時流を受け、『绅士大概一分钟』(紳士の大体1分間)はタイアップ動画もコンテンツとして公開しています。
トイレなどの消臭剤を販売する会社とのタイアップ動画では「世界一臭い缶詰・シュールストレミングのにおいを消臭剤は消せるか?」というテーマで出演者たちが実際に実験に取り組みます。五感を刺激する実験のため、出演者のリアクションに非常にリアリティ、人間味が感じられ魅力ある作品となっています。
このタイアップはじめ、実際に中国人消費者の心をとらえ、見てもらえる動画にはどんな要素が存在するのでしょうか。
続く一編で「中国人と日本人の感度の違い」にスポットを当てて、鳥本氏が手掛けた過去の事例を参照しながら、掘り下げてみていきたいと思います。
▼続きはこちら
【セミナーレポート】「山下智博」が刺さる!中国人ウケするクリエイティブ(2)中国人と日本人の感度の違い