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【越境EC】中国EC商戦の戦い方③ 信用がイノチ! 知られざるソーシャルバイヤーの世界

中国市場向け販売チャネルとしてますます注目されている「越境EC」。多くの企業が悪戦苦闘していますが、そのなかで注目されているのが「ソーシャルバイヤー」。いわゆる「爆買い」の火付け役ともなった彼らは、その登場から現在に至るまで進化を続け、新たなビジネスモデルとして展開されています。今回からそんなソーシャルバイヤーの世界に触れていきます。

そもそも「ソーシャルバイヤー」って?

これまで越境EC活用と言えば、Taobao(およびT-mall)、JD.com(京東)といった大手ECサイトへ旗艦店を開設したり、そうしたサイト内に店舗を持っている卸商などに商品供給し販売を委託したりといったケースが多かったと思います。

こうした手法はブランディングなどにおいて有効ながら、出店のハードル高かったり、委託費用が高額だったり、店舗そのものの認知度を高めるためにマーケティング費用が掛かってしまったりと、日本側には負担が大きい手法でした。

それを補う中国向け販売チャネルとして今、注目され始めているのが「ソーシャルバイヤー(中国名:微商)」です。

彼らの多くは中国国外に居住する個人であることが多く(一部は小企業)、独自ルートで海外商品を買い付け、それを中国の消費者に向け、ソーシャルネットワークを利用して販売するという存在です。

2014年頃に始まった「爆買い」も、多くはこのソーシャルバイヤーによるものと言われておいます。また現在、日本には45万人にのぼるソーシャルバイヤーがおり、日本の人気商品やまだ見ぬ優良商品の発掘を行っているようです。

このように言うと、多くの日本企業が「聞いたことがあるけれど、よくわからない」、「転売屋でしょ?」、「信用できるの?」といった印象が先に走る傾向にあります。

実はこうした疑念は、かつて「代購」と呼ばれた、初期のソーシャルバイヤーのイメージが根強く残っているため。

しかし、変化の激しい中国では、ソーシャルバイヤーも絶えず進化。今や強い発信力によって日本の商品を宣伝し、またその誠実な対応によって中国消費者の信頼を勝ち得ているのです。

中国SNSの事情を知れば「ソーシャルバイヤー」がわかる

こうしたソーシャルネットワークによるビジネスを可能にしたのは中国におけるSNSの急速拡大。Weibo、We Chatの2大SNSはその登場とスマホ普及とともにあっという間に社会に浸透しました。

基礎中の基礎ではありますが、この両者の違いが現在のソーシャルバイヤーを理解するには必要不可欠です。

まずWeibo。こちらは日本では「中国式Twitter」などと呼ばれていますが、ここで更新される情報は基本的にはオープン。すなわち誰でもその内容を閲覧することができるもの。不特定多数のユーザーに向けた情報発信が可能です。

それと異なり、ややクローズの情報発信となるのがWe Chat。個人の「モーメンツ(朋友圏)」機能によって発信される内容は、そのフォロワーしか閲覧することができません。いわば、一定の信頼関係をもった相手に向けての発信となります。

この中国SNSは企業のマーケティングにも活用されてきました。多くの企業は双方に公式アカウントを作成し、Weiboではパブリックな内容、We Chatではロイヤリティの高いユーザー向けの特定情報の発信(限定キャンペーンやサービスクーポンの発行など)と使い分けてきました。

それと同じことを、現在ソーシャルバイヤーたちも行っているのです。

消費者はWeiboやすでにフォロワーとなっている知人などからソーシャルバイヤーを知り、接触。やがて購入していきます。

もちろん、ある1つの商品を取り扱っているソーシャルバイヤーが複数存在しているのが一般的。消費者はその中から、「押し売りしない」、「丁寧な商品説明」、「明確な価格設定」、そして「商品発送の迅速さ」といったポイントを見ながら、ソーシャルバイヤーを見極めていきます。

「このバイヤーは信用できる」と認識すれば、そのバイヤーのフォロワーとなり、継続的な消費を行っていきます。またバイヤー側も、そのフォロワーの満足度を上げるため、商品情報の提供や商品の発送などを意欲的に行っていくことで、消費者からより高い信用を得ていく努力をします。

前述のようなソーシャルバイヤーの多さによっても競争原理が働き、優良ソーシャルバイヤーが生き残っていくシステムが醸成されてもきました。

 

共同でニセモノ対策。ソーシャルバイヤーたちの情報共有

こうしたロイヤリティの高い消費者を獲得するために、ソーシャルバイヤーたちが注意を払っている点がもう一つあります。それは「ニセモノ対策」。

以前は中国国内で人気商品のニセモノを入手して、低価格で売りさばくといった業者も存在していました。

しかし、最近は「ニセモノを販売することで信用が下がり、消費者が離れる」という意識がソーシャルバイヤー間で定着してきています。

最近はソーシャルバイヤーをターゲットにしたニセモノ業者も存在しているようです。

ニセモノ業者は中国でニセモノを生産し、日本に輸入。日本国内のソーシャルバイヤーに卸そうとしています。人気美容機器のニセモノが日本の税関で摘発された例がありましたし、人気女優であるファン・ビンビンが小紅書(Red)上で紹介した化粧品のニセモノなどが現れた例がありました。これも訪日観光客よりは日本国内のソーシャルバイヤーを狙ってのことと予想されます。

それに対し、ソーシャルバイヤーは「横のつながり」を強化。ソーシャルバイヤー間で、ニセモノ販売業者やニセモノを販売しているバイヤー情報、ニセモノの見分け方情報を共有し、「正しいソーシャルバイヤー市場」の形成を図っている模様です。

このように、これまで抱かれていたイメージとはがらりと変わってきた、中国のソーシャルバイヤー。

次回は「ソーシャルバイヤーとKOL」について紐解いていきたいと思います。

 


▼参考

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