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【中国APP】イマドキ中国女子のケータイの中、ノゾいてきました② ~中国女子に刺さるプロモストーリーとは?~

前回からお伝えしている中国トレンドExpress編集部の突撃取材による「イマドキ中国女子のケータイの中」。大きな消費能力と意欲を持つ中国の若い女性層。彼女たちの価値観や情報収集・分析スキームを探るべく、スマホに搭載されているAPPとその使い方について聞いています。

第2回目の今回は前回第1回目の内容を受けて、中国女子たちがどのように情報を収集し分析しているか、そしてどのように情報を流すべきかについて考察します。

取材日時:2019年1月
取材場所:上海市および江蘇省蘇州市
取材対象:中国90後世代の女性


▼第1回はこちら
【中国APP】イマドキ中国女子のケータイの中、ノゾいてきました①


前回紹介したインタビューで気になったのはWeiboと比較的新しく、今人気を集めているAPPである「小紅書(RED)」の使い分けでした。

もう一度簡単に整理すると、彼女たちがそれぞれのAPPで見るポイントは

  • Weibo:メディア、女優や俳優などの著名人、KOL、企業の公式アカウント
  • 小紅書:普通の人の発信

でした。

今回はその状況を少しおさらいも含めて分析してみましょう。


Weibo&KOLは「公的情報」?敏感な「対広告」感

そもそもWeiboとはまさに中国SNSの先駆け的存在。俗に「中国版Twitter」ともいわれており、かつては「中国の一般民衆の声を発信する場」として、国内だけではなく、海外メディアからも注目されるようになっていました。

またユーザーも、自身の日常生活の一コマから、目の前で起こった事件や事故をアップするなど、積極的な情報発信を行っていました。

やがてそこには市場に流通している商品に関する消費者個人の使用体験や感想などがアップされるようになり、中国の消費者にとってもメーカーにとっても貴重な「真実の声」を聞く場ともなっていました。

 

しかし、今回話を聞いていると、どうやらその様子が少し変わり始めているようです。

取材で出てきたのは「企業やメディアなどの公式アカウントやKOLのアカウントが多いので、そちらをチェックしています」(89生まれ)とのこと。

このあたりは以前と同じなのですが、問題はその後「そこで気になったものを、今度は小紅書で調べる」(全員からの回答)という点です。

特に小紅書では「一般ユーザー」の書き込みをよく見るようで、「固定の有名人の書き込みではなく、とにかく目的の商品を使った人の書き込みを、なるべく多く、上から読んで行って、それで買うかどうかを決めます」(90後看護学生)。

 

つまりこれまでは宣伝、広告で見た情報をWeiboで調べていたのを、現在はWeiboで広く公の情報を収集し、小紅書で一般消費者の生の声を確認する、という使い方へと変わっている様子。

Weiboが公的なメディア化し、小紅書がかつてのWeiboの役割を担い始めている、と言えなくもありません。

取材したすべての女性が「小紅書」のアプリをダウンロード。全員が「情報収集用に活用している」と回答してくれた

イメージとしては、個人の感想などを発信していたFacebookが、今はどちらかと言えば企業のオフィシャルサイトとしての色合いが強くなっていったことに似ているかもしれません。

ただ、日本と異なるのは「広告への警戒心」が極めて高い中国の消費者。こうした「企業が起点になっている発信」に対しては、まさに眉に唾を付けてかかるのです。

 

実はKOLに関しても同様の傾向が見られます。

これまではKOLというのは、非常に高い発信力を持つ反面、あくまでも消費者の代表であり、実際に使用した感想などを消費者に伝える存在でした。

しかし近年、KOLマーケティングの盛り上がりによって、企業が「KOLを通して」発信するケースが増え、それにより中国の消費者もKOLの発信情報に「広告が混じっている」(90後デザイナー)ことを感じ取っています。なかには「有名女優が安い商品ってホントに使うの?って思うときもあります」(89年生まれ)といった、かなり率直な意見も聞くことができました。

とはいうものの、KOLが使っている(もしくは紹介している)商品は貴重な情報源であるらしく、比較的公の広告情報として収集しており、そのツールとしてWeiboが使われているというのが現状に近いようです。

重要なのは「ザワめき」?イマドキ女子のSNSマーケ対策

こうしてWeiboが世に現れてから約10年程度ですが、その機能そのものの性質、そして中国消費者の使い方が変わり始めているようです。

数年前は「中国最強のSNS」、「これさえやれば中国マーケティングは安心」などと言われてきたWeiboですが、消費者にとっては徐々に発信される情報のセグメントがプライベート情報から比較的オフィシャルな情報へと認識されつつあるようです。

さらに中国トレンドExpressでも繰り返し述べているように、広告情報への警戒心が極めて高い中国消費者に対して、Weiboだけに頼ったマーケティングは通用しなくなるかもしれません。

 

では、どのようにすべきでしょうか?

変わらないのは、中国の消費者が一般消費者、つまり「企業とは何の利害関係のない存在」による率直な感想、すなわちクチコミを重要視している点です。そしてそのクチコミの起点となるのは、やはりオフィシャルの情報。

こうした点を総合的に考えると、まず「Weiboや有名KOLによって大きく、広く情報を発信する」、そしてそれを口コミ情報として信用度の高いAPP(例:小紅書など)でザワめかせる、という流れ、そのためのストーリー作りが一層重要になってくると考えられます。

逆に言えばいかにWeiboやKOLで発信しても、「ザワめき」を起こす仕掛けが乏しいと、中国消費者には届かない可能性も出てくるということ。

単純に「Weiboをやれば」、「KOLに頼めば」という時代ではなく、中国消費者間のザワめきを広げる話題と仕掛けを考え出す「企画力」に頼らなければならないと言えるでしょう。

 

次回はこうした小紅書と、日本でも人気となった中国発APP「TikTok」によるインバウンドマーケティングの可能性について考えてみたいと思います。