2017年夏を振りかえる（１）～広がる中間所得層、内陸部の「買った」ランキング～

訪日旅行にやってくる中国人の多くが「沿海部」と呼ばれる経済的に栄えた都市の市民であることは皆さんもご存じのところかと思います。一方で、トレンドExpressの各調査では内陸部からの訪日、インバウンド需要の芽が見えてきています。

では、クチコミランキングを沿海部、内陸別に分解してみると、何か違いがあるのでしょうか？

中国トレンドExpressでは初の試みとして、7月5日～8月22日の夏休み期間の「買ったランキング」TOP50について、沿海部（北京、上海、広東省、浙江省、江蘇省）とそれ以外の内陸部でクチコミ件数を算出しなおし、ランキングTOP30 を改めて作成しました。※沿海部にはユーザーの居住地が不明なものも含む。

本編では、ランキングのTOP10、11～20位、21～30位と見ていきます。この夏の訪日中国人の消費動向を、昨年よりも詳細に振り返るための材料としてお使いいただければと思います。

なお全体の夏のランキングについては、トレンドViewerの新機能、「ランキング期間集計」にて、お好きな期間で集計してご覧いただけます。ぜひご確認ください。

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洗顔の内陸部、メイクアップ用品の沿海部（TOP10）

まずは内陸部と沿海部、それぞれの「買ったランキングTOP10」を見ていきましょう。

日本で「買った」ランキング　TOP10（集計期間：7月5日～8月22日、対象SNS：新浪微博）

内陸部1位は「液体ムヒベビー」となりました。液体ムヒベビーは今年の6月から全体ランキングで2位をキープしており、その好調さは特に内陸部での人気が支えていることがわかります。

続く2位には「雪肌精ホワイト洗顔クリーム」が登場しています。上位の常連である「雪肌精」は、沿海部では1位だったものの、内陸部ではTOP10圏外となりました。

内陸部は2位以外も3位に洗顔料が入っており、基礎化粧品の中でも「洗顔」に注目が集まっていることがわかります。一方、沿海部の2位には口紅の「キッカ メスメリック リップスティック」がランクインしていることから、基礎化粧品からメイクアップ用品へ関心が広がっていることが見て取れます。

「二子政策」で注目が集まるベビー用品を見てみると、内陸部の6位に「ポリベビー」が入っています（沿海部では29位）。ポリベビーは昨年9月ごろからなだらかな上昇傾向にあり、やはり内陸部からの支持が厚いことが予想されます。

ポリベビーはおむつかぶれやあせものための薬です。おむつの材質や交換頻度によって、どうしても荒れてしまう乳幼児の肌を治療するために利用されているのでしょう。日本では乳幼児の肌荒れに対し、まめにおむつを交換したり小児科で荒れ止めをもらったりする習慣がありますが、中国の内陸部では日本のような育児環境ではないとも考えられそうです。

TOP10ではおむつの「moony」が内陸部では7位、沿海部では8位と両方にランクインしました。材質の良さ、デザイン（サイズ感）の良さを紹介する動画があり、その人気の理由の一端がうかがえます。

その他、沿海部で上位となったアイテムに、4位「ゴキブリホイホイ」6位「大人のカロリミット」があります。TOP10ではありませんが沿海部30位には「夜遅いごはんでも」もランクインしました。害虫駆除、ダイエットのためのこれらのアイテムに対する需要の裏には、さらに一歩上の快適さ、便利さを備えたライフスタイルを求める気持ちが見えてくるようです。

「アイメイク」はここから？　内陸部にだけケイトのアイテム（11～20位）

では続いて、11位～20位を見ていきましょう。

日本で「買った」ランキング　11~20位（集計期間：7月5日～8月22日、対象SNS：新浪微博）

内陸部で1位だった「液体ムヒベビー」が、沿海部11位となりました。TOP10は逃したものの、中国全土で人気の日本製品だということがわかります。同製品は子供用の虫刺され薬ですが、成人用の虫刺され薬がランキングに見当たらないことを考えると、「子供に使える薬」への需要が高いとも考えられそうです。

また内陸部15位「雪肌精」、13位「ゴキブリホイホイ」、14位「キッカ メスメリック リップスティック」と、沿海部のTOP10が内陸部の11～20位に登場します。内陸部でここからもっと人気が出ると、全体のランキングがさらに上がっていく可能性もあります。

その他、内陸部19位はアイシャドウ「ケイト カラーシャスダイヤモンド」がランクインしています。この製品は去年4月以降緩やかに順位を上げていますが、沿海部では20位以内に入っていません。内陸部の消費者に支持されていることがわかります。日本のメイクアップ商品は、内陸部から支持を広げていくという可能性もありそうです。

「ロリエエフしあわせ素肌」「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」「女の欲望 COOL&UVアームカバー」は地域を問わず人気となっていることもわかりました。

内陸部にも気候いろいろ、ヘアケア注目の要因は（21~30位）

では最後に、21位～30位までを見ていきましょう。

日本で「買った」ランキング　21～30位（集計期間：7月5日～8月22日、対象SNS：新浪微博）

内陸部は乾燥性の気候の地域もあるので、そういった地域の消費者に支持されているのか、あるいは温暖な気候の地域で人気なのかといった点を把握すれば、さらに一歩踏み込んだ訴求ポイントを生み出せそうです。内陸部の25位「エッセンシャル エアリーモイスト トリートメント」の日本で「買った」ランキングのランク推移をみると、昨年春に初登場してからあまりランクを落とすことなす緩やかに上昇を続けていることがわかります。この製品も内陸部の支持が厚いようですが、日本製のヘアケアへの関心は内陸部を中心に拡大していくのでしょうか？注目していきたいところです。

他に、内陸部29位に「リモワ　スーツケース」（沿海部では16位にランクイン）が入りました。リモワ　スーツケースの「買った」ランキング順位の推移を見てみると、2015年8月以降ランキングを落とし、昨年春節あたりから再度ランキングをあげています。昨年春節あたりまでで沿海部でのブームが一段落し、そこから内陸部に少しずつ関心が広がっていったことも考えられます。

まとめ

沿海部とそれ以外で人気のアイテムに違いがあることがよくわかる結果となりました。中国向けのプロモーションでは経済力や地域による習慣、気候の違いなどに注意して、各地域でどういう商品に需要があるのか見極めることが必要です。

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中国・都市解説（３）山東省（済南市） ～無骨な男性と古代の思想家が支える裕福な沿海部～

中国・都市解説（４）河北省（石家荘市）　 ～避暑地を悩ませる鉄鋼産業の大気汚染、「雄安新区」のハイテク産業が解決なるか～

（２）では、化粧品、医薬品などのカテゴリ別ランキングと、日本で「行った」ランキングのこの夏の人気上昇スポットについて見ていきたいと思います。

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【特集】2017年夏を振りかえる（２）～沿海部と内陸部「コスメ・化粧品」「医薬品」ヒット商品研究～