中国トレンドExpress

中国都市解説(6)湖北省(武漢市)~中国の問題を解決する秘蔵っ子「東風汽車」のおひざ元~

中国都市解説シリーズ、本日は武漢市を省都に持つ「湖北省」を取り上げます。

かしこいけれど、まとまらない!「9つの頭の鳥」

湖北省は安徽省、江西省、河南省、キョウ西省、重慶、そして湖南省と接する内陸の地です。長江の中流域に位置し、武漢市を省都としています。

省人口は5724万(2016年)、中国国内では第9位です。武漢市は1911年の辛亥革命の起点としても有名な「武昌」、そして漢口、漢陽の3都市が合併した行政区で、長江と漢水の合流点となっています。

省都武漢の水資源の豊かさだけでなく、同省は中国国内の淡水湖として2番目の大きさを誇る洞庭湖を有し、そのために発展してきた歴史があります。

またかつて楚の国としてその名を全国に知らしめたこの土地には、かの有名な赤壁の戦いの舞台や、李白の詩にうたわれた黄鶴楼といった歴史的名所が存在し、現在は中国国内の一大観光スポットとなっています。

 

湖北省の省民性を表す言葉に「天上九頭鳥、地上湖北佬」というものがあります。直訳すれば「天には9つの頭を持つ鳥、地上には湖北人」で、このままだとあまり意味は分かりません。

この表現は9つ頭を持つ鳥のように「かしこい」、しかし9つの頭の意見が一致しないように「内輪もめをしてまとまらない」というように解釈されます。

武漢を中心とした長江の水利の恩恵を受け経済的な発展を遂げた地域と、相対的な貧困にある地域を有する湖北省を象徴する言葉とも言えそうです。

経済水準は四川省に次ぐ全国7位のGDP

湖北省の経済状況は全国的には高水準なのでしょうか? 2016年、GDPは全国7位、社会消費品小売総額(中国の消費統計)は6位となっていました。人口では全国9位ですので、一人あたりのGDPは高く、湖北省の生産性の高さおよび消費力の強さが予測されます。

省別GDPランキング(2016年)

順位 地域 億元
1 広東省 79,512
2 江蘇省 76,086
3 山東省 67,008
4 浙江省 46,465
5 河南省 40,160
6 四川省 32,681
7 湖北省 32,298
8 河北省 31,828
9 湖南省 31,245
10 福建省 28,519
省略
31 チベット自治区 1,150

(備考)南方財富網より作成

 

社会消費品小売総額ランキング(2016年)

順位 地域 億元
1 広東省 34,739
2 山東省 30,646
3 江蘇省 28,707
4 浙江省 21,971
5 河南省 17,618
6 湖北省 15,649
7 四川省 15,502
8 河北省 14,365
9 湖南省 13,437
10 遼寧省 13,400
省略
30 チベット自治区 457

※1 中商情報網より作成
※2 黒竜江省のみ未公表
※3 小数点は切り上げ


▼GDP全国7位の湖北省の上にランクインした四川省はこんな都市

中国・都市解説(2)四川省(成都市) ~激辛料理とパンダの先に存在する、8000万人の消費者~


「環境保護」が追い風、代表企業の「東風汽車」

最後に2016年の湖北省内の企業ランキングをご紹介します。

湖北省企業ランキング(2016年)

順位 企業名 2016年経営収入(万元)
1 東風汽車公司  57,261,266
2 中国建築第三工程局有限公司 16,033,201
3 中国葛洲垻集団有限公司  10,039,639
4 大冶有色金属集団控股有限公司  8,080,187
5 湖北宜化集団有限責任公司  7,809,035
6 武漢鋼鉄(集団)公司 7,734,061
7 九州通医薬集団股份有限公司 6,155,684
8 武漢鉄路局  6,084,873
9 中鉄十一局集団有限公司  5,629,454
10 卓爾控股有限公司  5,086,427

(備考)十大品牌より作成。

全体的には建築や鉄鋼関係の企業が強いようですが、第一位の「東風汽車」はその中でも頭一つ二つ抜きんでた額となっています。

それもそのはず、同省を代表する企業である「東風汽車」は、中国国内で「第一汽車」「上海汽車」といった一流自動車メーカーと並び称される自動車メーカーで、中国自動車メーカーの「ビッグ5」の一つなのです。

そして今、「東風汽車」ひいては湖北省のポテンシャルをさらに底上げしているのは、全国的な「環境保護」の機運の高まりでしょう。自動車業界は今、かのアリババにも負けずとも劣らない注目産業となっているのです。

今、上海の街中を走る車にはEV(電気自動車)も多くなっています。購入に対する補助金など市場での優位性だけでなく、中国の環境対策にも貢献するEVの市場拡大は、当然の帰結となるのではないでしょうか。

実際に、中国国内で東風汽車のEV(電気自動車)の売り上げは2017年に入ってからは堅調です。また、今年の8月末には、東風汽車はルノー、日産とEVの合弁会社を設立することが発表されています。

ルノー、日産の助力も得た東風汽車。豊かな水をたたえる湖北省から今後、中国の澄んだ空気といったかけがえのない価値が創出されていくのかもしれません。

参考:
東風のEV好調、1~9月販売131%増(出典:アジア経済ニュース)
ルノー・日産、東風と開発合弁 中国EV市場で先手(出典:日本経済新聞)


▼都市解説シリーズ、バックナンバーはこちら!

中国・都市解説(1)浙江省(杭州市) ~賢く稼ぐ名勝地!大企業の本拠地は、上海に次ぐマーケットになるか?!~

中国・都市解説(2)四川省(成都市) ~激辛料理とパンダの先に存在する、8000万人の消費者~

中国・都市解説(3)山東省(済南市) ~無骨な男性と古代の思想家が支える裕福な沿海部~

中国・都市解説(4)河北省(石家荘市)  ~避暑地を悩ませる鉄鋼産業の大気汚染、「雄安新区」のハイテク産業が解決なるか~

中国・都市解説(5)江蘇省(南京市)~いにしえの首都 江蘇人は日本人のパートナーに最適?~


▼環境保護が喫緊の課題、そのほか中国の抱える問題とは?

宮田将士の上海だより(2)消費者の生活環境はマーケティングのヒントに~中国が抱える3つの問題~