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【中国APP】初期の……なイメージを払拭 EC市場ともリンクし拡大中のライブ動画APP

日本以上のスピードで急成長した中国のモバイル、アプリ市場。前回に引き続き、その中国のアプリ市場2018年第1四半期の様子をモバイル調査機関「チーターモバイル」のデータを基に見ています。今回は中国で急拡大し、現在はマーケティングの手法としてECにも活用されている「直播(ライブ動画)」です。

 

※用語解説

週間アクティブ浸透率
チーターモバイル独自の指標。APP市場全体のアクティブユーザーのうち、何%がそのAPPを利用していたか。

周平均起動回数
そのAPPのアクティブユーザーが、1週間で何回そのAPPを起動させたか。

日平均利用時間
アクティブユーザーが1日に平均何分間そのAPPを利用していたか。

調査会社iiMedia Researchの調査では、2017年末のライブ配信アプリのアクティブユーザー数は3.98億人。2019年には5億人を超えるとの予想がされています。

中国のチーターモバイルの調べによる2018年Q1の人気アプリは以下の通りです。

参考】中国ライブストリーミング配信アプリTOP10

APP名 週間アクティブ
浸透率
周平均起動回数 日平均利用時間(分)
YY 1.66% 24.6 10.7
虎牙直播 0.47% 63.8 31.2
闘魚直播 0.41% 56.2 24.4
企鵝電競 0.24% 44.8 18
YY極速版 0.23% 7.9 5.9
騰訊NOW直播 0.19% 67.3 18.4
触手直播 0.13% 60.4 20.5
一直播 0.13% 25.3 7.2
咪咕直播 0.12% 32.7 12.9
花椒直播(コスメ) 0.12% 61.3 18

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TOP3はどんなアプリ?

ではまず、上位3位の概要を見てみましょう。

YY直播
2008年という早期に登場し、中国国内における「ライブ配信業界」の基礎を作り上げたと言われているアプリです。音楽、サイエンス、アウトドア、スポーツ、ゲームなどの内容を網羅、幅広いユーザーを集めているアプリです。

虎牙直播
2012年9月に登場した、中国における「弾幕式」ライブプラットホームの代表的アプリ。弾幕を使ってのコミュニケーションによって人気を得、1日の平均視聴時間もトップ10内においては最長となっています。2018年5月11日にはニューヨーク証券取引所に上場。

闘魚直播
虎牙と同じく、弾幕式ライブ配信アプリ。もともとは2007年に「AcFun」という名称でスタートした中国「弾幕式」ライブ第一号でしたが、人気を虎牙に奪われていきました。2014年に名称を「闘魚直播」と変更し、2016年には20億元に上る資金を調達。巻き返しを図っています。

チーターモバイルの調べでは、これらのアプリの内、好調なのは「YY」。2018年Q1の週間アクティブ浸透率は前期比75%。さらに3月にはインターネット速度をさらに早めた「YY極速版」(チーターモバイルのランキング5位)を送り出し、さらなるシェア拡大を図っている模様です。

また「E-スポーツ」とも呼ばれているゲーム対戦ライブアプリも急成長しています。もっとも積極的に展開しているのはテンセント。虎牙直播と闘魚直播にそれぞれ出資し、同時に自社のライブ配信アプリである「企鵝直播」および「騰訊NOW」(チーターモバイルのランキング6位)を活用して、ライブ配信におけるE-スポーツ市場の独占を図っています。

低俗からの健全化。中国ライブ配信の歩み

中国におけるライブ配信は、10年程度で急拡大をし、昨2017年には本格的にECとも結びつき、「ライブコマース」という市場を作り上げました。しかし、その草創期は決して健全と言えるものではありませんでした。

多くが「男性が美女との会話」を楽しむツールであり、多くの男性がその動画を介してプレゼントを贈り、それが現金として配信者(女性)の収入になるもの。より多くの収入のために、女性側もより過激な内容を配信するようになり、その品位は低下の一途をたどりました。

そうした状況に、2016年頃から政府も「綱紀粛正」を図ってきました。低俗なライブ配信に対して業務停止処分を行うなど、厳しい対応を取り、それによって「美女ライブ」は市場の表舞台から姿を消していきます。

しかしライブ配信自体の人気は衰えず、台頭してきたのが、「ユーチューバー」を思わせるパフォーマンスライブや、おすすめコスメを紹介する美容ライブといった内容のもの。

さらにそのユーザーの増加によって企業がマーケティングの手法としての活用をはじめ、多くのKOLを生み出し、ライブコマースへと発展していったのです。

では、なぜネット上のライブ配信にあつまるのか?

最後に、「なぜライブ配信」が人気になったのかという点について考えてみましょう。この命題については、中国国内でも多くの考察、議論がされています。

まず1つは「刺激を求めて」というもの。

草創期の「美女ライブ」がその典型でしょう。普段の生活や娯楽とは異なる刺激や興奮を求めてライブ配信へとたどり着くケースが多いと言われています。

さらに、ライブにおいて発信側にとっては「多数へ向けての発信」となりますが、ユーザーは「1対1」でのコミュニケーションのような錯覚を得ることができる点も考えられます。美女ライブの場合は「普段は味わえない刺激を自分だけのものに」という満足感。コスメや商品情報においても、「自分だけに発信されているような独占欲が満たされる」という指摘をする専門家もいます。

それとは相反する欲求を満たしているのは「ゲーム・ライブ」です。これは数多くの同好の士とその興奮を享受しているという楽しみなのだそうです。

ただ、中国消費者において特筆されるのは、やはり既存メディアへの不満、不信といった部分もあるようです。

ドラマやニュース、映画なども厳しく管理されている中国では、発信されている情報の真実性に対して懐疑的にならざるを得ません。しかし、政府の管理の追い付かないインターネット上で、リアルタイムで発信されるライブ動画は、誰の手も入っていない情報。それゆえに純粋にその内容を楽しむことができるようです。

高い人気を得ている中国のライブ動画。ECとの結びつきによってさらに大きく広がっていくことが予想され、今年の618やW11などのEC商戦でも昨年以上の注目を集めています。