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今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.6 ~複雑さを増す中国消費者の購入プロセス

前回までのこのコーナーでは中国の消費者像、特に日本からは見えにくい中国消費者の一般生活を理解しながら、より具体的な消費者の姿を把握してきた。ここからはそうした消費者が、そのように商品を知り、購入まで向かうのかを見ていこう。

今回はまず消費者の行動の全体像を把握しよう。

▼これまでの記事は
今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.1「カスタマージャーニーマップ」とはいったい?
今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.2 ~中国消費者を知るための心構えはいかが?~
今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.3 ~中国市場でのペルソナ、イメージできていますか?~
今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.4~上海の生活を覗いてみよう・前編
今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.5 ~上海の生活を覗いてみよう・後編

数多くの情報チャネル。どこを最初の接触ポイントとして使うか?

基本的に消費者が購入に至るまでに、「認知」・「興味・理解」・「検討」・「購入」といった流れを追うことが多い。

【参考】大まかな購入までの流れ

そうした道のりの最初に来るのが「認知」というフェーズである。

現代中国において、中国の消費者が各種商品と接触するポイントは非常に多い。特に近年は情報ソースの乱立によって、中国消費者もあの手この手で情報を収集している。

 

中国消費者が日常的に使用しているSNSを見てみても;

  • Weibo
  • WeChat
  • Red
  • B站(Bilibili)
  • Douyin(中国Tik Tok)

など、数多い。

 

日本では時折「最強のSNS・Weibo!」といった書籍やセミナーを見かけるが、実際に中国の消費者に話をしてみると、上記のような多様なSNSを複合的に使う、もしくは自身の嗜好によって使う物を選択して使っている。

 

つまり中国市場において「最強のSNS」と言われるものは存在しないと考えてよい。

 

もちろん、どのように最初の接点を得ていくかについては、細かく考え設計していく必要があるが、そのポイントについては次回詳しく見ていこう。

目的に応じた情報収集ツール。特性を理解する必要も

商品を見て興味を持った後、消費者はその商品を「理解」するための情報を収集し始める。その背景に関して少しふれておこう。

 

そもそも中国の消費者は企業が生産・販売している商品に対して、非常に慎重である。かつて中国のメーカーが作る製品の品質はあまり高くなく、しかし非常に良い製品であるかのように宣伝してきた。

そのため、出回っている商品情報に対しては、直接その情報を信じず、「信頼性のある商品情報」を求めるのである。

 

そのため活用するツールが

という、検索機能を有するツールである。

 

ここでも複数のツールを複合的に活用しているのが、現代中国消費者の特徴と言えるだろう。

 

ただ注意が必要なのが、消費者が商品理解を深めるポイントも様々であること。

その目的と、使い方としては「商品に使われている主成分の効果」や「メーカーの企業情報」に関しては「Baidu」を使い、不特定多数の中でその商品を使用した人の評価を知りたい場合は「小紅書(Red)」、そして身近な友人で同様に使用した経験のある人の情報を欲する場合は「WeChat」のモーメンツ機能を利用するのである。

広がる購入チャネル。中国消費者の情報収集にも活用

こうした理解を深め、購入を考えるようになるが、そのまま則購入と行かないのが中国の消費者。日本ではインバウンドの爆買いの印象が強いが、元来、「お金を使うことに慎重」な国民性なのである。

 

理解を深め、購入を考え始めたときに行うのが「検討」である。

 

この検討フェーズに使われるツールもまた、多様である。日本でも知られたものを上げても;

  • Taobao
  • T-Mall
  • JD.com
  • VIP
  • Red
  • PDD

 

である。しかしこれは大きな「EC」という枠組みである。これに、より専門的なセグメントである越境ECを加えると;

  • T-Mall Global
  • JD Global
  • Kaola
  • Yangmatou
  • ソーシャルバイヤー

 

この検討でまず考えられるのが価格の比較である。簡単に言えば「どこが安いか」である。もちろん、本物を購入できるという条件下においてである。

 

しかし中国消費者が確認するのは価格だけではない。もう一つの目的は「実際に購入した消費者の評価」を確認する事である。

つまり消費者は各店舗における価格や商品の紹介だけでなく、EC店舗で購入した別の消費者の評価、感想をチェックしているのである。

 

このように見てきたように、中国の消費者が購入までたどり着く道のりはいくつかのフェーズに分かれていること、そして同時に各フェーズで使用するツールが複数ずつあることが把握できたと思う。

 

つまりは、これらフェーズとツールの掛け合わせで、中国消費者たちは商品の情報を収集し、精査し、確認し、購入の可否を決めているのである。

日本の企業が中国消費者の購入行動を「理解できない」と嘆くのは、この複雑さによる。

このコーナーでは、はこうした複雑な消費者のジャーニーを一つ一つ分析し、中国消費者の購入パターンを理解していこう。

次回は「消費者の認知」を深掘る。