【column】618大型商戦に潜むファンマーケティング争奪戦 大型商戦の新たな戦略は?
上期最大商戦の618も佳境に入っている。2021年も例年と変わらず各ブランドのプロモーション合戦が展開されており、主戦場であるECプラットホーム、ライブプラットホームも賑わいを見せている。
しかしその裏側で、中国のブランドは静かに新たなマーケティング~販売モデルを構築しつつある。
華やかな商戦に隠れた新たな動きの片りんを除いてみよう。
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例えば抖音(Douyin)が提唱した「興趣電商(興味EC)」である。
これはショート動画プラットホーム、そしてデータ解析という強みを生かし、ユーザーの嗜好を解析し一人ひとりの好みに合わせた商品を登場させるという手法である。
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これまでECプラットホームは、ライブなどによって消費を喚起し人が商品を探しやすい環境を作ってきたが、抖音はプラットホーム内に流れ込む大量のトラフィックから各ユーザーの嗜好を割り出すことで、「人が商品を探す」時代から、「商品が人を探す」というモデルへとECを変化させようという取り組みを行っている。
新たなモデルを引っ提げて618に正式参入した抖音。その結果は6月20日以降の発表を待ちたいと思う。
同時に2021年の618で議論が進んでいるのが「私域流量」。
ブランド独自のファン層を囲い込み、そのファン内部におけるリターン消費を創生させていこうという、ファンマーケティング構想である。
▼私域流量(PrivateTraffic)についてはこちら
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これまでは、ECプラットホームやSNSプラットホームに集まるトラフィック(ユーザー・消費者)を各ブランドが呼び込み、購入してもらうという形が一般的だったが、。
では私域流量(PrivateTraffic)では、ファングループや会員という形で囲い込んだトラフィック群の中で、いかにして反復消費を生み出していくかがポイントとなるもの。
言い方を変えれば、ECプラットホームに依存しないマーケティングシステムである。
とはいえ、そのトラフィックは自然に集まるものではなく、主体的に集めていかなくてはならない。もちろんこれまで通りの
そのトラフィックが、中国ではある一定のタイミングで一定の場所に集まるチャンスがある。
それが618などの大型商戦。
この日は多くの消費者がお得な商品を購入しようとECプラットホームに集まる。そこで消費をさせるのだが、買ってもらうことが最終目的ではなく、「買った客を会員として取り込む」という事を最終目的として戦略を立てるのである。
こうして徐々にではあるが、618を「販売の場」ではなく、「自社のファンを囲い込む場」として戦略を立てる動きが中国で進んでいるようなのだ。
618商戦の目標は売り上げにあらず? 新たな商戦の目的
商戦の最終目的を売り上げではなく、会員の獲得という動きを中国の業界メディアなどが紹介している。
紹介されているのはミキサーや豆乳機といったキッチン家電メーカー「九陽」であり、メディアに対して同ブランド天猫旗艦店の運営担当が2021年618の目的を「会員ユーザーの取り込み」と語っている。
メディアが伝えるところ、この戦略のメリットは長期的視野に立った客単価および購入回数だ。
1年間で九陽が獲得した会員数は70万人。
数百万フォロワーという数字が当たり前の中国では、やや少ない数字に思えるかもしれない。
しかし、九陽の話す内容によれば「会員の客単価は非会員の1.5倍。また非会員の1年間の購入回数は1.1回なのに対して、会員は平均で2回と倍になる」という。
つまり、会員化(ファン化)した後の消費者は、1回の消費金額も消費回数も、非会員よりも高まり、長期的に見ればより高い経済効果を生み出すというのである。
▼参考記事
618多电商平台角力 私域会员制迎下一风口(中文)
また別のメディアも同様にファン取り込みによる効果を語っている。
「例えば618で10万人のユーザーから15万件のオーダーを得た。客単価は100元。そうすると、618での売り上げは1500万元。
その60%のユーザーが会員になったと仮定すると6万人の会員を得たことになる。また、ユーザー寿命のLTVを500元と換算すると、1回の618における経済効果は3000万元と、単純に618に参加した事の倍の効果が得られる」
もちろん上記は、あくまでも仮説であって、実際にそこまでうまくは回らないかもしれない。しかし、中国国内のメーカーにとって、618のような大型商戦は単純に安く売る場、というよりも、自社の会員ユーザーを獲得するための場という認識が広がっていると考えられる。
▼参照記事
给正在忙618的老板们算一笔账,为什么一定要做私域?!(中文)
「売場」からまさに「狩場」へ。
中国で展開されるファンマーケティングによって、商戦そのものもその性質が変わりつつあるようだ。