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「美人が派手に」だけじゃない!最新KOL事情(1)企業の目標を達成するKOLの見つけ方

2020年のオリンピック開催に向け、勢いを増しながら成長しているインバウンド市場。一方で中国向けマーケティング、プロモーションにはこれという定石がなく、まだ模索のフェーズにある企業もあるようです。

今や生放送、動画配信と形態にかかわらずKOLを起用したコンテンツは、中国でのマーケティングには欠かせない施策の一つです。ところが、「KOLが必須」ということを理解していても、自分のプロダクトにあったKOLが見つけ出せない、特に「過去の実績」「フォロワー数」「過去最高のPV」といったごく限られた指標でしかそのKOLを採用するか否かの判断ができないという悩みを抱える日本企業は少なくありません。

本編ではトレンドExpress代表取締役社長の濱野智成のインタビューをもとに、中国で成功するKOL施策のための「指標」の読み解き方、施策で注意すべき事項を伝授いたします。

”急がば回れ”で企業として経験ノウハウをためる

「KOLを選ぶコツ」というと、一発で、自社プロダクトと相性の良い一人を見つけ出すことをゴールとして思い描く方もいるかもしれません。

しかし、まずはこの考えを捨て去る必要があります。相性の良いKOLと出会うためには、「反響を見て」「目標を達成しないならば違う方を探して(試しながら)」「反響の良い人材は継続して契約できるようコンタクトを途切れさせない(抱え込み)」という一連のサイクルを経験することが必要です。

まずは「この方に頼んでみよう」という5人を利用し、そのうち反響の良かった人を選抜します。こういった繰り返しで、「自社プロダクトのターゲットとマッチするKOL」を見つけ出すことができます。まだ中国市場に挑戦、成功している日本企業は多くありません。「失敗を経ることなく成功する」、それだけが成功の唯一の姿ではないはずです。「これではなかった」という経験を次に生かす姿勢で挑戦すること…それが「自社プロダクトのターゲットとマッチするKOL」と出会うための近道にすらなります。

KOLは媒体、「フォロワー」の動向をチェック

そうはいっても避けられるリスクは避けたいもの。KOLと自社プロダクトとの相性を多少なりとも読むために、何をチェックすればよいでしょうか? それは「KOLのフォロワーの動向」です。

今、中国のマーケティングには「自媒体」(WeMedia)という概念があります。KOL、インフルエンサーは突き詰めるとメディアと同じ立ち位置です。一方、媒体の形は様々です。彼らの運営するSNSアカウントを総称して「自媒体」(WeMedia)と呼びます。

KOLが媒体であるととらえれば、その先の読者に向けて広告を打つのだと読み替えることができます。そして、媒体であるKOLの先の読者層つまりフォロワーが自社製品のターゲットになりうるかどうかは、フォロワーのSNSでの日常的な行動、リアクションが参考になります。

効果測定のハウツーと注意ポイント(KGI)

フォロワーの100万人のうち何%に刺さり、【購買】や【シェア】というリアクションが得られるかどうかをKGI(Key Goal Indicator)として設定し、KOL施策を採用する企業も多いと思います。

こういったニーズに対しては、リンク先クーポンやQRコードの誘導を利用することにより、施策の効果測定を行います。注意すべきは、あまり広告色が強いと表示されないことがある点です。

企業の熱量の高さとKOLの人選の成功は比例する

KOL施策を成功させるために心得ておかなければならないことに、「成功するKOL施策はマネジメントコストがかかる」ということがあります。KOLはネット上で影響力を持った人物です。ネット以前の時代に存在したようなマスで活躍する「大スター」と異なり一般人に近い存在として認識されるためか、「比較的安価な/容易な施策」と認識している日本企業も存在するかもしれません。

しかし実際は、KOLはフォロワーに対し影響力を持った「アイドル」にほかなりません。一昔前のアイドルと異なり、その容姿や活動形態の規格は画一的ではありませんが「スター」としてネット上で活躍しているのです。プロモーション施策への参加を実現し、自社プロダクトの魅力をより正確に、響く形で伝播してもらうためには相応のコストがかかります。

金銭的なコストはもちろんですが、KOL選定の決定に携わる立場の人間がKOLの輪の中に入ることも施策の成否を左右するでしょう。自分がSNSを運用しKOLになることも、KOLの見極めには非常に効果があります。KOLであるということで、KOL同士のネットワークでしか手に入らない情報が入手できることもあるからです。

あるKOLが影響力を与える「地域」にも非常に偏りがあります。代理店やマネジメント会社経由でKOLと契約する場合、こういった「影響力の地域的偏在性」を見落としがちですが、広大な面積のマーケットだからこそ、必ず考慮すべき要素といえるでしょう。

KOL選定の注意事項と施策設計の常識

KOLを複数採用する場合に忘れてはならないのは、フォロワー層がかぶらないようにすることです。

例えば類似した系統のKOLのフォロワーには、両名を重複してフォローするフォロワーが存在する可能性があります。同額の予算を投じるのであれば、プロモーションコンテンツはより広く拡散させるほうが良いので、フォロワーのかぶらないKOLを複数採用することが正解となります。

 

 

採用するKOLのレベル人数、また施策の設計には、「予算」「どのくらいのリーチを得たいのか」がかかわってきます。

2017年10月現在、中国のKOL施策で押さえておくべき共通認識は以下です。

  • リンクへのコンバージョンは平均して約5%といわれている。
  • コンバージョンの数字を左右するのはLP(ランディングページ、例えばTmallの購入先リンク)キャンペーン内容である。
  • キャンペーンは「どのくらいの数量」を「どのくらいの粗利で」販売するかという目線を含んで設計する。
  • 購買をKGIとした施策ならば、リンク先には「一押し商品」が購入できるウェブページを設定する。即座に購入を決断できる設計であることが肝要で、反対にECサイト旗艦店のトップページなど購入までに再度の操作が必要なLP(ランディングページ)はコンバージョンを下げるのでNG。

キャンペーン内容は「共感度の高い層」という視点で決断を

「ブランド」のイメージというのは、おしなべて完成され整ったものであると思いますが、KOLのふりまく情報が、KOL含めて「完璧」であることはキャンペーンの成功に必ずしもつながるわけではありません。

なぜなら、フォロワーがそのコンテンツで推薦されている消費を自分にあてはめ考える「自分事化」をして初めて、コンバージョン(視聴者による消費、購入)が呼び起こされるからです。もちろんブランドイメージを棄損するようなコンテンツは採用すべきではありませんが、キャンペーン内容はブランドイメージの訴求だけでなく「自分事化」を引き起こすファクターが必要です。

自分事化とは、コンテンツの視聴者が「私もこの体験をしたい」「私もこれがほしい」と感じることです。自分事化を引き起こすファクターには、フォロワーのうちKOLに対する『共感度の高い層』という項目も並びます。

例えばゲーム系、アニメ系のキャンペーンにはセクシーな女性KOLを起用することがこのところの定石となっています。その理由は、セクシーな女性KOLのフォロワーにはゲーム、アニメの消費に『共感度の高い層』が多いからです。共感度の高さはコメントから判断することができます。 

KOL自身のイメージ、嗜好も参考にするべきですが、フォロワーの共感するコンテンツであるかどうか、つまりそのコンテンツがフォロワーに「自分事化」を引き起こすものであるかという視点は忘れてはいけません。セクシーな女優のインスタグラムは、フォロワー数は多くても男性ばかりで、女性用の化粧品のプロモーションには向かないというケースを想像してみれば理解されるのではないでしょうか。

まとめ

KOL施策を実行する場合その人選は商品を取り扱う企業が選ぶのがベストですが、代理店の利用が必要なシーンもあると思います。その場合は代理店の担当者に「そのKOLを推薦する理由」「そのプランを推薦する理由」を尋ねてみることです。そしてその理由が納得できるものでなければ、再度別の案の出し直しを依頼することが必要でしょう。

代理店のプランが適切であるかどうかは、以下の項目について明快な見解が出てくるかどうかで判断できます。

  • そのKOLのフォロワーの動向(リアクションの傾向)
  • そのKOLが影響力を持つ地域について
  • ランディングページの設定は適切か

繰り返しになりますが、「過去の実績」「フォロワー数」「過去最高のPV」の3つでは判断材料として不十分です。そして、失敗を恐れずに、トライアンドエラーで経験を蓄積することをおろそかにしないことが、成功への第一歩となるでしょう。


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